【喫煙は立派な「病気」】

たばこ税の増税が話題になる中、それまでに禁煙したいと考えているGさん(47歳)。なるべく苦労なくやめたいが、どんな方法が自分に向いているのか、決めかねている。

今年10月から値上げが予想されているたばこ。これをきっかけに禁煙を決意する人が増えれば、病気予防の側面からは願ってもないことだ。

喫煙は様々な病気を引き起こす原因となることが明らかになっており、喫煙者の死亡率は、非喫煙者に比べて男 性で1.55倍、女性で1.89倍にも上る。

たばこの害で一番に思い浮かぶのは肺ガンだろうが、発症のリスクが高まる病気は多岐にわたる。呼吸器の病気 はもちろん、胃潰瘍や胃ガン、子宮頸ガンや低体重児出産、白内障、歯周病、脳卒中、糖尿病、認知症などでも危険度が高まる。

また、喫煙者は非喫煙者に比べて2.4倍インフルエンザにかかりやすい。重症化のリスクも2倍以上高い。喫煙 で免疫力や、気管支の異物を排泄する機能が低下するためだ。

さらに強く禁煙を勧めたいのが、メタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人。喫煙とメタボの相乗作用 で、虚血性心疾患や脳梗塞などの危険性が増大する。メタボの喫煙者は、メタボでない非喫煙者に比べ、狭心症や 心筋梗塞の危険性が3倍になる。しかも、喫煙者はメタボになりやすい。

こうしたリスクは、喫煙の総量が多いほど高まる。逆に、禁煙をすれば、たばこを吸わない人並みに戻せる。

ヘビースモーカーは禁煙外来へ
たばこの害は十分に分かっていてもなかなかやめられないのは、常習的な喫煙者はニコチン依存症という「脳の 病気」だからである。本質は、覚醒剤などの薬物依存症と同じなのだ。

たばこを吸うと頭がスッキリすると感じるのは、ニコチンの禁断症状による覚醒レベルの低下が通常のレベルに 戻っただけのこと。禁煙すれば、喫煙のために仕事を中断する必要もなく、作業効率も上がる。

禁煙成功の第一歩は、禁煙開始日を決め、目標を設定することから。禁煙しやすい環境を整えることも大切だ。 ストレスを感じた時や飲酒の席などは喫煙しやすい。周囲に禁煙を重言して、飲み会にしばらく誘わないように協力してもらうのも一法だ。

最近ゼは、ニコチンガムやニコチンバッチ、内服薬など、禁煙補助薬の選択肢も広がっている。自分の意思だけ で頑張ろうとしすぎず、「喫煙も病気なのだから薬を使おう」と気楽に考えてみてはどうだろうか。

薬局などで入手できるニコチンガムやニコチンバッチは、軽度(ライト)から中度(ミドル)のスモーカー向け。 ガムは30分から1時間かけてゆっくりと噛む必要があるが、たばこを吸いたくなった時にその都度噛めば、禁断症 状を軽くできる。ニコチンバッチは1日1回張るだけと手軽で、禁断症状を抑える効果に優れているが、突然たば こを吸いたくなった時に対処できない欠点がある。

医療機関で処方されるニコチンバッチは、市販のバッチより高用量のため、ニコチン依存度が高いミドルから重度 (ヘビー)のスモーカー向け。24時間バッチを張るので、起床時の禁断症状も抑えられる。

さらに、2008年に認可された日本初の経口禁煙補助薬「バレニケリン」も中度以上のスモーカー向きだ。薬の服用中にたばこを吸っても満足度が得られないので再喫煙しにくく、禁煙率が高いのが特徴だ。禁煙外来など、医療機関での禁煙では、禁煙の方法や薬の使い方、禁煙による体重増加に対するアドバイスなども受けられる。保険適用には条件があるが、費用が安く済むので相談してみるといいだろう。

たとえ禁煙中にたばこを吸ってしまっても、失敗は練習と考えればいい。禁煙成功者の多くは、何度も再喫煙の 経験があるものだ。大切なのは、あきらめないことである。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/02/01号、中村 正和=大阪府立健康科学センター(大阪市東成区)健康生活推進部部長]

戻る