【早いほど慣れやすい老眼鏡】

手元の書類がぽやけて見えづらくなったSさん(41歳)。近視用の眼籠を外したり、目を凝らしたりしていたが、頭痛や肩凝りを感じるようになり、老眼籠を作ることにした。

40歳前後から、正視の人も近視の人も、老視が始まる。加齢によって目の水晶体の厚みを調整する毛様体筋が衰え、近くのものに焦点を合わせられなくなるためだ。無理して近くのものにピントを合わせようとしていると体にも負担がかかり、疲れ目から頭痛や肩凝りなどの症状を感じるようになる。我慢せずに近用眼鏡(老眼鏡)などで矯正することを勧める。

老眼鏡は、眼鏡店以外でも容易に手に入るが、購入前には眼科で受診してほしい。見えにくくなっている原因は、必ずしも老視だけとは限らない。老視が始まる年齢以降は、白内障や緑内障、眼底疾患、糖尿病網膜症など、“目の成人病”と呼ばれる疾患を発症しやすくなっていく。

靴は夕方から夜に買いに行けと言われるが、目の検査は午前中に受けた方がよい。仕事で目を酷使した後だと、疲労で目の調節機能が低下するため、本来の視力を測れなくなってしまう。診察の順番を待っている時も、読書などで目を疲れさせないようにしたい。

正視の人なら、必要な時に老眼鏡をかければいいが、近視の人で遠くをはっきり見せる遠用眼鏡を常用していると、かけ替えが面倒になる。そんな場合は、遠くを見る時と近くを見る時のレンズを1枚に合わせた遠近両用眼鏡という選択肢もある。

よく見る距離に合わせて作る
眼鏡の処方を受ける場合は、仕事中などにどんな距離にあるものを見る機会が多いかや、どんな距離のものを見る時に見えにくいかを医師に告げるとよい。Sさんの場合、仕事中は手元の書類とパソコンの画面を見ていることが多く、遠方をほとんど見ないということなので、パソコン用の中用レンズと手元用の近用を合わせた中近両用眼鏡がいいだろう。

遠、中、近用のレンズを組み合わせたものや、遠用から近用まで累進的に焦点距離を変えたレンズもあるが、複数のレンズを1枚に収める場合、それぞれのレンズの面積が減ってしまうため、使いにくいこともある。

自動車を運転する機会が多く、遠くがはっきり見えなければならないが、中距離にある速度計などのパネル表示が見えにくいという人には、遠中両用眼鏡がいい。また、稀な例だが、セミナー講師などを務める機会が多く、手元のテキスト、中距離の黒板、遠距離の受講者のいずれもはっきり見たいという人には、レンズの上から中、遠、近用を並べたものが使いやすい。黒板は見上げる位置に、テキストは胸元を見下げる位置にあるためだ。

このように様々なタイプのレンズから、仕事や生活習慣に合ったものを選ぶことができる。ただし、近用のレンズが下に入った眼鏡をかけると、階段を下りる時など足元が見えづらくなる。これはレンズの下側にある近用のところを通して見ているためで、レンズの中央から上側の中、遠用の部分を通して見るように、あごを引いて足元を見れば解消する。

複数のレンズが入った眼鏡をかけ始める時には、対象物までの距離ごとにレンズの適した部分を通して見る練習が必要だ。この練習による眼鏡への慣れは、若いほど早い傾向がある。老視による見えにくさを感じたら、無理せず早めに眼鏡を作った方がいい。

どうしても複数のレンズが入った眼鏡に慣れない場合は、コンタクトレンズを検討してみるとよい。コンタクトレンズは、それぞれの距離用のレンズが同心円状に組み込まれているものがあるので、比較的慣れやすい。

また、目の調整機能は年々衰えていくので、老視の度合いも強まっていく。もし眼鏡が合わなくなったら、作り替えていく必要があることも、覚えておいてほしい。
(談話まとめ:佐藤 千秋=企画編集部)

[出典:日経ビジネス、2009/12/07号、林 清文=ハヤシ眼科クリニック(横浜市西区)院長・東京大学眼科専門外来登録医]

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