【男性にも起きる更年期障害】

最近疲れやすく、仕事にも身が入らないKさん(52歳)。年齢のせいだと思っていたが、男性更年期障害の存在を知り、検査を受けてみることにした。

「更年期障害は女性特有のもの」と思っていないだろうか。卵巣機能が停止することで起こる女性の「閉経」のように、分かりやすい体調変化はないが、男性も同じ生き物。中年になると、自認できなくても睾丸機能の低下とともに男性ホルモンの減少が密かに起こっていて、生理的体力は弱くなっていく。しかも、多忙な日々の強いストレスがそれに加わると、女性と同様の更年期障害症状が起きてくる。

更年期障害の症状として気づくのは、まず@よく眠れず、朝は元気がなく、なぜか仕事に対するやる気がなくなる、Aくよくよしたり、不安感が強かったりするなどストレス反応性の鬱症状が出る、B女性と同様に顔がほてったり、動悸がしたり、耳鳴りやめまいなどが出てくる、C肩凝りがひどく、重い頭痛や腰痛、手足の痺れや冷えを感じる、などだ。

そして、D男性としての基本的な生理である「早朝勃起」がないことに気づく。この症状こそ男性にとって非常に大きな身体変化のサインなのだが、更年期世代のほとんどの男性は、さほど気にしていないことに問題がある。

更年期障害は、性ホルモンの著しい低下に、生活上の強いストレスが加わった中年の男女に発症しやすい。比較すると、女性は性ホルモンの低下が発症の因子として強く、男性は生活上のストレス因子が強いことが多い。

特に、管理職に就いている40代後半から60歳にかけての男性は、ストレス過多の状態が、更年期障害発症の原因の多くを占めている。これを、本人はもとより、周囲の人も気づく必要がある。

前述のような症状を「忙しいから」「単なる仕事による疲れ」と安易に考えて放置していると、重症化してしまう。早い段階での生活環境改善と医学的な対応が肝要だ。

まずは医師の診察を受ける
早朝勃起がなくなるという、更年期で最も顕著な体のサインは、男性ホルモンの低下とストレスによる脳の機能抑制の複合作用で起きる。だが、この2つの体内要因は、ほかの諸症状発症の原因ともなるので注意したい。

実際、更年期障害の診断としては、まず血液中の男性ホルモン検査と臨床症状の詳細な項目チェックが必須である。それに、男性ホルモンと関係が深い早朝勃起のチェックが行われる。この有無の見極めが非常に重要だ。

血中男性ホルモン値の検査は、男性更年期障害の発見以外にも大きな意味を持つ。それは、男性ホルモンの低下を放置すると、糖尿病や高血圧などを併せ持つメタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の発症原因となることが分かってきたからだ。そればかりでなく、最近では男性ホルモンの低下が、寿命そのものをかなり短くするという医学的データも出ており、中年以降の男性が自身の健康を管理するうえで、非常に大切な検査の1つだと言える。

更年期障害の具体的な治療では、主に男性ホルモンの補充を行う。それに加えて、ストレス反応性鬱症状に対する軽い抗鬱剤や睡眠剤の投与を併用することも少なくない。さらに、早朝勃起改善のための薬物投与も重要だ。

しかし、現在の男性ホルモン量が同年代の平均値内であったとしても、若い頃に数値が高かった人の場合、減り方が著しければ更年期症状が重くなることがあるなど、個人差も大きい。そのため、人によって異なる症状や重症度によって、的確な医師の診断やカウンセリングが必要なのだが、医師側の対応が難しいのも現状だ。しかしながら、安易な自己判断で症状を我慢せず、まずは専門的な検査と医師の診察を受 けることが、更年期障害克服の第一歩だと理解してもらいたい。
(談話まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/11/23号、熊本 悦明=日本臨床男性医学研究所(東京都新宿区)所長]

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