【化学物質が体調不良の原因に】

半年前に自室の本棚を新調したEさん(45歳)。それ以来、頭痛や倦怠感が続いている。
「化学物質過敏症かもしれない」と妻に言われたのだが。

化学物質過敏症とは、一度に大量の化学物質に接触したり、長期にわたって化学物質に接触し続けるこ とで起こる病気である。詳しいメカニズムは不明だが、化学物質が体の機能のバランスを失わせ、発症すると考えられている。

化学物質過敏症の原因となる化学物質は様々だ。一般的なものには、殺虫剤に使われる有機リン系の化学物質や、有機溶剤、建材などに用いられるホルムアルデヒドなどがある。

新築の家への引っ越しやリフォームにより、こうした化学物質への接触が増えて発症するほか、本棚などの家具や日用品に含まれる化学物質が引き金となるケースもある。近隣の畑で使う農薬や、職場で使われる化学物質が原因になる場合もある。

複数の症状が同時に表れる
発症すると、ごく微量の化学物質、特に臭いに触れるだけで、頭痛や倦怠感、皮膚炎など、様々な症状が表れる。この場合、原因になった化学物質だけでなく、ほかの化学物質に対しても過剰に反応するようになってしまう。原因物質の特定が難しく、原因物質を除去してもしばらく症状が残ってしまうのもやっかいなところである。

化学物質過敏症の症状は、様々な器官に複数の症状が出るのも特徴だ。患者の多くが訴える症状には、集中力や思考力の低下、不眠、倦怠感、関節痛、頭痛、興奮、鬱状態などがある。

このように多岐にわたる症状が出るのは、化学物質の影響で自律神経系のバランスが崩れ、それがきっかけで中枢神経や免疫系、内分泌系などの機能に影響するためと考えられている。各症状は軽くても同時にいくつもの症状が表れるようなら、化学物質過敏症の疑いがある。

一番の治療法は、生活環境からできるだけ化学物質を排除すること。例えば、窓を開けたり、換気扇などによる室内の換気の徹底は必須。空気清浄機の使用も効果的だ。空気清浄機は、化学物質を吸着する活性炭などが入ったタイプがいい。イオンやオゾンなどを放出するタイプでは、化学物質を除去することはできないからだ。また、書籍のインクから出る化学物質も原因の1つ。寝室への持ち込みは控えたい。

一方、自律神経のバランスを取り戻すため、規則正しい生活を送り、化学物質の添加の少ない飲食物を取るようにしたい。さらに、体の代謝を促す方法として、入浴、低温サウナ、運動による発汗もいい。適度な運動は自律神経のバランスも調整する。

これまで化学物質過敏症としての検査や治療には、原則として健康保険が適用されていなかった。だが、今年10月から保険適用が予定されており、患者にとっては治療を受けやすい環境が整うことになった。心配な症状があれば、まずは主な症状を扱う診療科で診てもらい、ほかの病気でなければ環境医学の専門機関を受診してほしい。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/09/28号、相澤 好治=北里大学(神奈川県相模原市)医学部長]

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