【医師との対話カを高めよう】

これまで病気をしたことのなかったHさん(営業職、47歳)が、右の下腹部を痛がり総合病院に入院した。私のクリニックに通院している奥さんから、患者体験のないHさんが医師とのやり取りに戸惑っていると相談を受けた。

ビジネスで複雑な問題を解決する時、高いレベルでの考慮が誰にでもできるようにパターン化された思考モデルを「フレームワーク」と呼ぶ。良質な医療を受けるには、医師に対する適切な質問カが必要であり、重要なポイントを漏らさずに考え、意思決定をする「医療IQ」を高めたい。そのための、「患者版フレームワーク」をまとめた。

医師に開くべき5つのポイント
@i診断の根拠
 診断の根拠を聞くことで、医師の思考が追体験でき、より理解が深まる。きちんと説明できない医師は、自分でも理解が足りないことも多い。ただし、時間に伴う症状の変化を見ないと診断がつかないこともある。まず薬を飲み、反応や効果を見て診断・治療することもあるので、集らないことが大切だ。

Aほかに考えられる病気
 昔から診断学では、診断に当たり、いくつかの候補病名を挙げることが重要とされている。それを一つひとつ分析し、理由を挙げて否定していくことで、先入観を避けた正確な診断ができる。患者は“シマウマ探し”をして悩まないこと。ひずめの音を聞いた時、大抵の人は馬を予想する。稀なシマウマ、つまり、非常に稀で危険な病気を考えないようにということだ。

B治療の選択肢
 治療には、リスク(危険性)とベネフィット(効果)がつきものである。ベネフィットを最大限にしながら、リスクを最小限にするのが適切な治療となる。念のため、治療しなかったらどうなるかも聞いておく。

C治療効果を示すデータ
 治療するならば、客観的に効果を判定するためのデータが必要だ。ガンの治療であれば、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)で腫瘍の縮小具合を確認したり、腫瘍マーカーという 血液検査上の数値で効果を見る。

D治療の目標・期待する結果
 治療効果の感触や予想、病気の完治を目指すのかどうかを明確にし、根治が望めない場合は病気と上手につき合う方法を考える。
 さらに、患者にとって重要なのは、長期的な視点を持つことだ。例えば、悪玉コレステロールと呼ばれ るLDLコレステロールは、高値でも症状がない。しかし、将来的には脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす元凶となる。10年、20年後を考えたリスクマネジメントをしてほしい。

Hさんは、このフレームワークを基に医師と対話し、安心して治療を受けたという。無事に退院したと報告があり、私も安堵した。

[出典:日経ビジネス、2009/09/14号、江田 証=江田クリニック院長]

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