【増加する胸郭出口症候群】

ゴルフ中に、合図をしようと手を挙げたHさん(52歳)。
小指から肩にかけて痺れを感じ、それ以来、日常でも手や腕に痺れを感じるようになった。

腕を肩より高く上げた時に、手に痺れを感じる、普段も肩や腕のだるさや痛みを感じるという場合、疑 われる病気の1つに胸郭出口症候群がある。耳慣れない病名かもしれないが、整形外科を受診される患者さんにはよく見られ、珍しい病気ではない。診断名をつけられていない人や、受診しないまま自然に治る人もおり、潜在的な患者数は実際よりも多いと思われる。

この病気は、胸郭出口部が狭くなり、そこを通る神経や血管が、筋肉や骨に圧迫されることで発症する。胸郭出口部とは、一番上の肋骨と鎖骨の閏、首回りの筋肉に挟まれた隙間を指す。

胸郭出口部のどこが庄迫されているのかにより、症状の出方が違う。しかし、胸郭出口部の神経や血管が圧迫されて起きる症状であれば、総称して胸郭出口症候群と診断される。

胸郭出口症候群の患者さんには、なで肩の女性が多い。男性では、、首が短く筋肉質の患者さんが目立つ。これらの人は、体形的に胸郭出口部が狭いため、この病気にかかりやすい。

姿勢の悪さが大きな原因に
胸郭出口部が狭くなるのは、一部には外傷もあるが、多くは生活習慣に起因する。特に姿勢の悪さが主な原因となっている。悪い姿勢が長く続き、鎖骨が正常な位置に保たれなくなると症状が表れる。

例えば、長時間のパソコン作業で画面をのぞき込むように首を前に突き出し、背中を丸めた姿勢でいると、症状が表れやすくなる。また、毎日重い荷物を持って営業に回るビジネスバーソンなども、荷物のせいで首や肩の筋肉が伸ばされ、胸郭出口部の神経や血管が庄迫を受ける。さらに、肥満も姿勢の悪さを増長する。脂肪がつくことでお腹が突き出て腰が反り返り、顎が前に出ているような体勢で立つようになると、胸郭出口部が狭くなる。

治療には、理学療法によるリハビリを行うほか、痛みがあれば消炎鎮痛剤を処方する。生活に支障が出るほどの痛みが続く場合には、袖経ブロック注射もする。稀に外科的手術を行うこともあるが、通常そこに至るまでに様々な手立てを講じる。

まず、症状を和らげるには、悪い姿勢を改めることが必要だ。デスクワークでは、背筋を伸ばし、首を胸よりも前に突き出さないように心がけたい。肥満傾向があれば、減量も効果がある。また、首、肩、胸のストレッチも勧めたい。デスクワークの合間に習慣づけるとよいだろう。鎖骨を支える筋肉の力が弱いと、姿勢の悪さなどから鎖骨が下前方にずれて胸郭出口部が狭くなるので、これらの筋肉を鍛えることも 治療や予防の一環となる。

ストレッチや筋肉の鍛え方については、専門医や理学療法士から指導を受けるのが望ましい。さらに、体の痺れには脳梗塞などほかの病気の可能性もあるので、まずは胸郭出口症候群かどうかの検査を受けてみてほしい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/09/14号、寺尾 友宏=プライマリ整形外料麻布十番クリニック (東京都港区)院長]

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