【季節の変わり目の体調管理】

夏の間、体に無理を重ねていた営業マンのEさん(54歳)。
秋口になって微熱が続いたため、病院で診てもらったところ、前立腺ガンが見つかった。

暑さが続くと、秋口になって少し気温が落ち着いてくる頃に、体調の変化が起きやすい。近年は特に、 気候変動にむらがあるため、体調管理は今まで以上に難しくなっている。

 その例として、今年の夏は熱中症で病院に運ばれた人が例年の3倍に及ぶと言われている。また、今夏はA型インフルエンザの患者が非常に多かった。通常、インフルエンザは秋の終わりから冬にかけて患者が増加するものである。季節の疾患にも変化の兆しが見られて油断できない。

暑さで体力を消耗したり、冷房に当たりすぎて体が冷えたり、冷たい飲料を飲みすぎたりする人は多い。夏休みに休養せず活動的にしすぎると、気づかぬうちに疲れをため込んでしまう。

こうしたいわゆる夏バテは、早めに対処しておく必要がある。軽視していると、食欲不振、だるさ、疲労感、下痢微熱などが、9月頃から表れやすくなる。女性の場合は特に、自律神経失調症に陥りやすい。

秋口に気をつけたい病気
この頃には、カンピロバクター腸炎が増加する。原因となるカンピロバクター菌は細菌性腸炎(いわゆる食中毒)の原因となる菌の1つ。レバ刺しなどの生肉や、焼き肉や焼き鳥などの生焼けの部分を食べたりすると発症するので注意したい。2〜3日の潜伏期間を経て、強い腹痛や高熱、血便に見舞われる。

尿路感染症の患者も、この時期に多く来院する。膀胱炎や腎盂腎炎が重症化すると、細菌が血中に入り、敗血症を併発することもある。

さらに、代表的な感染症は、患者が増加しているインフルエンザだ。当初はA型インフルエンザが、新型か、従来の季節型かのウイルス検査を行っていた。しかし、現在ではクラスター(大勢での発症)のケースのみ調べるようになってきているため、詳しい動向の把握が難しい。季節型インフルエンザの場合、効果的な治療薬としてはタミフル、リレンザが挙げられる。タミフルの耐性菌に有効な漢方薬の麻黄湯も併用される。

季節の変わり目に体調を崩きないためには、普段から免疫力を高めておくことだ。よく言われることだが、質の良い睡眠を十分に取る、栄養バランスの良い食事を取る、軽い運動を継続的に行うといった対策を心がけたい。また、精神的な問題も体調を崩す要因となるため、ストレスヘの対処も大切である。例えば、疲れた時には信頼できる人に愚痴をこぼして発散するのも1つの方法だ。

夏のインフルエンザとともに最近、原因不明の熱で病院を訪れる患者が多い。調べてみると、感染症、膠原病、悪性腫瘍が3大原因となっている。熱が1週間以上続く時は要注意だ。Eさんのように熱に潜む大病を見逃さないよう、体からの注意信号を感じたら早めに受診してほしい。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/09/07号、濁川 博子=財団法人東京都保健医療公社豊島病院(東京都板橋区)感染症内科医長]

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