【体調も筋トレでデザイン】

最近、「坂井さんに会うと元気をもらえます」と言われる機会が増えました。それも、企業に勤める若い人から言われる割合が多いように感じます。

私は極めてわがままな人間なので、人の意見をあまり聞きません。聞くのは妻の言うことくらい(笑)。企業に勤めている人のように、言いたいことが言えないといったストレスを感じることもない。40年以上、自分のやりたいことをやりたいようにやってきているせいかもしれません。

私は自分の肩書を「コンセプター」と呼んでいます。これも、デザイナーやデイレクター、プロデューサーといった1つの形にとらわれない、私自身の自由な好奇心を表現したものです。

昨年からは慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授に就任し、休日もほとんどなくなりました。でも、仕事が趣味のようなものなので、休みたい、遊びたいといった気持ちも起こらないのです。学生や30〜40代の講師たちと老壮青のコミュニケーションが図れることで勉強になりますし、いい刺激にもなって活力を得ています。

現在は、携帯電話のプロデュースや、センサー技術などを搭載した盲導犬に代わるハイテク杖の開発プロジェクトなどに取り組んでいます。解剖学者の養老孟司先生が、現代社会を「人間が脳だけで存在する“脳化社会”」と称しています。まさに私も、デザインからエレクトロニクスの領域にまで関わっているため、人一倍コンピューターを使い、常に新しい技術を追っています。しかし、人間は本来、骨があり、筋肉があり、皮膚感覚を持ったフィジカルな存在です。そのバランスを保つことが、心身の健康を維持するうえでとても大切だと思います。

疲れた時は体を動かす
私は、パソコンに長時間向かっていて、脳が疲労していると感じた時は、筋肉トレーニングを始めます。体を動かすことで、気持ちも頭も切り替えることができるのです。筋トレは、体力の衰えを感じた30代後半の頃から毎朝の日課にもなっています。

朝6時に起床した後2時間はど、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を行ってから、今日は背中、下半身など、その日ごとにプログラムを決めて鍛えます。朝、運動をするとその日の体調が分かるので、調子のあまり良くない時は、無理をせず短時間で切り上げるようにしています。

毎朝、体重と体脂肪も測定します。増えている時は昼食を控えたり、夕食でごはんなどの炭水化物を取らないようにしたりといった工夫で、ベストな体調を維持しています。

米国の経営者は「自分の体を管理できない人間が、組織を管理できるはずがない」とよく言います。私もやはり、自分の体形や体調は、自分でコントロールするものだと考えています。近年は、運動不足の人が増えているようですが、運動をすることで心肺や筋肉が鍛えられ、低下した代謝が促進されます。眠りの質も良くなります。特に、50代以上の人が運動をするようになれば、増大する日本の医療費も軽減されるのではないでしょうか。

私は企業人であれば引退を迎える時期です。しかし、今後も体調をデザインしながら、一生現役で仕事をしていきたいと思っています。 (談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)
[出典:日経ビジネス、2009/08/03号、坂井 直樹=ウォタ−デザインスコープ社長]

参考:
坂井直樹(さかい・なおき)氏
1947年生まれ。京都市立芸術大学デザイン学科入学後、渡米し起業。
73年帰国後、日産自動車「Be−1」など多くのヒット製品のコンセプトワークを手がける。
2004年から現職。
2008年慶応義塾大学大学院教授就任。

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