【常識に縛られずにダイエツト】

定期健診で毎回、減量を指導されているNさん(59歳)。
太ってはいても、悪いところがないためか、どうしてもダイエツトが長続きしない。

病気は痩せているより、太っているせいでかかりやすくなるものが圧倒的に多い。例えば、患者数の増 加が目立つ逆流性食道炎は、肥満が1つの原因だ。心臓や肝臓の病気もしかり。介護が必要となる運動器障害の代表である変形性膝関節症や変形性腰椎症なども、肥満と無縁ではない。

ダイエツトは60代までが勝負だ。定年後、いくら趣味に生かせる蓄えがあっても、健康でなければ意味を成さない。Nさんのような場合でも、体内では密かに病気が進行している可能性は高い。

一般的に、つらいダイエツトは長続きしないし、たとえ痩せられてもリバウンドしやすい。中高年のダイエツトに無理や我慢は禁物である。ダイエツトをするなら朝食は必須だとか、1日30品目は持取しなければとか、毎日体重を測定し記録しようとか、そんなことは無視して構わない。とりあえずできることからスタートしよう。あれこれと考えてしまっていては、二の足を踏んでしまうのも当たり前だろう。

ダイエツトを続けるのに必要なのは、モチベーションだ。3年前、私は10カ月で20kg減量した。その時のモチベーションは「減量してテニスの大会で優勝する!」というものだったが、人によっては富士山に登るだとか、同窓会で女性陣をアツと驚かせたいというのもあるだろう。漠然と「痩せる」よりも、具体的イメージがあった方が頑張れるものである。

飲酒時の食事は削ってOK
現在の体重は、食生活を含めた生活習慣によるものだ。であれば、何かを削る工夫をすれば、減量できるはず。惰性で食べていた休憩時間のスナック菓子をやめたり、缶コーヒーを無糖のものにしたり、朝食をカロリーの少ないものに替えるだけでも効果はある。

お酒を飲む時に、食べないと体に悪いと思って無理に食べているのであれば、それをやめるといいだろう。肝臓専門医の立場からすれば、飲酒時の食事の奨励は、一般的な日本人には必要ないと考える。本来それは、アルコールしか取らない、痩せたアルコール性肝硬変の人に向けて、欧米で唱えられ始めた指導であり、日本人の場合は、むしろ飲酒時に食べるつまみのせいで、肝臓を悪くするケースが多いのだ。

ダイエツト中でも、食べ過ぎることはあるだろう。その場合は、自暴自棄になることなく「仕方ない、食べたい時もあるさ」と自分を慰め、「その分をどうすべきか?」と、策を練ればいいだけである。それは、会社経営における考え方と何ら変わりはない。

私は20kgの減量に成功した3年前から、リバウンドなしで体重を維持している。その経験から1冊の本を出版するに至ったが、そこでは難しいノウハウには触れず、ダイエツトの考え方やアイデアを披露した。「痩せなければ」と思っているなら、ぜひこれを機会に、できることから始めてほしい。

(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)
[出典:日経ビジネス、2009/08/03号、山田 春木=社会保険中央総合病院(東京都新宿区)内科部長]

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