【“美しくない”庭にも愛着】

2007年の社長就任以来、以前にも増して多忙な生活を送っています。幸い幼い頃に風邪を引いたことがある程度で、54歳になる今まで病気らしい病気はしたことがありません。もともとの素質もあるかと思いますが、体と心のバランスを取るよう常に心がけていることが、健やかに過ごせている秘訣だと自分では信じています。そのために特に大切にしているのが、自然との触れ合いです。

私の故郷はオーストリアとの国境に位置する・ドイツ・バイエルン州のパッサウという町です。ドナウ川とイン川が交わるこの町で、私は豊かな自然と歴史的建造物を身近に感じながら育ちました。生家にも数千m2の広大な庭があり、父はその庭でのガーデニングの趣味が高じて、様々な賞を受賞したりもしていました。

しかし、1981年に来日し、東京のような大都会で暮らすようになってからは、自然と接する機会が少なくなってしまいました。そして、いつも当たり前にあった自然が、どれほど安らぎと力を与えてくれていたかに気づきました。それからは、意識して自然との触れ合いを持つようにしています。

10年前に戸建ての家を構えた際に、小さいながらも自分の庭を手に入れました。庭はプロ任せにはせずに、自分の手で様々な木々や草花を植えました。この10年間、毎日のようにそれらの植物を見て過ごす時間が、大事なひと時になっています。

私の庭は、他人が見るとちょっと変わっていると感じるかもしれません。自分で食べた野菜や果物の種を植えてみたり、ほとんど実のならないオリーブの木や、菓が落ちて枯れかけている名も知らぬ木なども植えていたりするため、見た目にはあまり美しくないのです。

それでも私にとっては、10年間見守ってきた愛着のある木々です。実がならなくても、枯れかけていても、葉が1枚でも残っていれば、捨てるようなことはできません。植物も人間と同じで、愛情をかけて育てると、それに応えてくれるような気がします。

雄大な自然から活力を得る
通勤には車を利用していますが、天気のいい日には少し手前で降りて、会社周辺の緑を眺めながら歩いて行きます。帰宅後は、毎日散歩に出かけています。これはもう日課になっていて遅くなって疲れていても、歩かないとかえって体の調子が悪くなってしまいますね。

まとまった休みが取れる時には、雄大な自然が望める場所を旅するのも、楽しみの1つです。ここ5〜6年はスカンディナビアによく足を運ぶようになりました。北欧の手つかずの自然を前にすると、圧倒的なパワーが感じられ、活力がみなぎってきます。

今年のバカンスは地中海の西部に浮かぶコルシカ島を訪れる予定です。コルシカ島は美しい海と高峻な山脈、そして、古代の遺跡や文化が息づく島です。私は古い文化にも関心があり、その地に立って当時の人々の暮らしに思いを馳せると、広い視野で物事を考えられるようになります。何か問題を抱えていたとしても、取るに足らない小さなことだと思えるようになるのです。こうした時間を意識的に取ることは、心身のバランスを取るうえでも必要なことだと思っています。
(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

[出典:日経ビジネス、2009/0706号、クリスチャン・トーマ=トリンフ・インターナショナル・ジャパン社長]

参考;
クリスチャン・トーマ氏
1955年生まれ。独国ミュンヘン大学卒業。
81年ウ工ラ・ジャパン入社。85年トリンブインターナショナル・スイス入社。
86年同ジャパン入社。2007年1月から現職。

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