【精液に血液が混ざる血精液症】

妻との性交渉の後、精液が赤いことに気づき、重大な病気かと心配になったGさん(34歳)。
泌尿器科を受診すべきだろうか。

精液に血が混ざっていたら、大抵の人はびっくりするに違いない。しかし、これは「血精液症」(けつせいえきしょう)といって珍しい病気ではない。20〜30代に多いと言われるが、40〜50代にも普通に見られる。そのほとんどは精液に血が混ざるほかは何の症状もない。時に下腹部や会陰部の不快感、頻尿、残 尿感などが同時に起こる場合がある。

精液の所見は、全体的にピンク色がかっている人もいれば、白濁した精液の中に血の魂が見られる人もいる。血液が新しく量が多ければ真っ赤に見え、精嚢(せいのう)などにたまった古い血液が出た場合には茶褐色になるなど、人それぞれ様子も違う。

主に精液は、細胞成分である精子と、前立腺液や精嚢液などの液体成分からできている。精子は精巣(睾丸)で作られ、精巣上体(副宰丸)、精管、精管膨大部、射精管を通って尿道に出てくる。血精液症は、これらの精路あるいは尿道、膀胱といった尿路のどこかに障害があって出血した場合に起こる病気だ。

すぐに受診しなくても大丈夫
原因としては、前立腺・精嚢・尿道などが何らかの病原体によって起こした炎症、前立腺内の結石、前立腺や精嚢の嚢胞や憩室といった部分の形態異常、そして50歳以上になれば前立腺肥大症や前立腺ガンなども考えられる。しかし、患者の多くは原因が分からない「特発性血精液症」だ。

自分の精液に血が混ざっているのを発見すると、あわてて泌尿器科へやってくる人は多いが、本来は1〜2カ月様子を見てかまわない。ほとんどはそれくらいの期間で自然に治ってしまうからだ。症状がそれ以上続いた時に、受診するといいだろう。

検査は、精巣・精巣上体の触診、前立腺・精嚢の直腸診(肛門から指を挿入して調べる検査)や超音波検査、尿検査、精液中の悪性細胞や細菌の有無を調べる精液検査などを行う。50歳以上の人は、血液検査で前立腺ガンなど悪性腫瘍との関連を調べることをお勧めする。一連の検査で尿や前立腺分泌液などに異常がなければ様子を見る判断になったり、前立腺炎が認められれば抗菌剤が投与されたりと、原因によって対応は違ってくるだろう。

日常生活で特に注意する点もほとんどないが、あえて言えば、前立腺炎が原因の人は、前立腺や会陰部の刺激を少なくすることを心がけたい。デスクワークや運転など座っている時間が長い仕事の人は、気分転換に時々オフィスなどを歩くといいだろう。サイクリングが趣味の人は、会陰部がサドルに刺激されすぎないよう気を配る。

精液内に炎症を示す細胞がない限り、血精液症が不妊の原因になることはない。血液の混ざった精液が女性の膣内に射精されても、女性に悪影響はなく、特に性交を控える必要はない。完治した後も、再発の頻度はそれほど多くないだろう。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/06/29号、矢島 通孝=やじま泌尿器科クリニック(神寮川県相模原市)院長]

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