【口唇へルへスの放置は禁物】

20代の頃から口唇ヘルペスに悩んできたSさん(40歳)。
これまでは放置していたが、「感染する」と周囲に指摘され、初めて皮膚科を訪れた。

接触によって人から人へと感染し、一度感染すると再発を繰り返すヘルペス。唇やその周辺に小さな水ぶくれが密集してできるのが「口唇ヘルペス」で、単純ヘルペスウイルスが原因で起きる病気だ。

単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は唇や顔面など上半身に、2型は性器を中心とする下半身に主に発症する。この単純ヘルペスウイルスに一度感染すると、神経節(末梢神経の途中で神経細胞などが集まった結節状の部位)にウイルスが潜伏して、免疫力や抵抗力の低下などをきっかけに活性化し、何度も再発を繰り返す。

以前はほとんどの人が小児期に、周囲の人との接触によって1型に感染して抗体を持っていた。だが、今日では核家族化や衛生状態の向上により、20〜30代でも半数程度の人しか抗体を持っていないと言われる。小児期の初感染は無症状あるいは軽症であるのに対し、成人となってからの初感染では発熱やリンパ節の腫れ、倦怠感といった全身症状が出ることもあるなど、症状が重くなる傾向がある。特に、アトビー性皮膚炎や免疫異常の病気と重なると重症化しやすい。“単純”と名のつくウイルスでも楽観はできない。

口唇ヘルペスを発症している人は、年1〜2回再発するケースがよく見られる。通常は再発のたびに軽症化していく。再発を繰り返すうちに、唇や顔面など水ぶくれができる部位にピリピリ、ムズムズ、チクチクといった前徴を感じるようになる人も多い。

抗ウイルス薬で効果的治療を
まずは、この再発の前徴を察知したら、早い時期に治療を始めることをお勧めしたい。治療には、抗ウイルス薬の使用が最も効果的である。ただし、抗ウイルス薬にはウイルスを殺す作用はなく、ウイルスの遺伝子に働いて増殖を抑制するために用いられる。神経節に潜伏しているウイルスに対しても効果を得られるものではないため、症状の出始めでウイルス増殖中の適切なタイミングでの投薬治療が望ましい。

まれに無症状でもウイルスを唾液中などに排泄していることがあるが、その時のウイルス量は少ない。しかし、症状が出ている時期はウイルスの量も多いので、水ぶくれを触ったり破ったりしないこと。患部を触った場合は、すぐに手を洗う。ウイルスがついたタオルや食器などからも感染するため、ほかの人との共用は避ける。

また、抗体を持っていないパートナーとのオーラルセックスによる感染で、相手に性器ヘルペスを発症させる危険性もある。初感染の性器ヘルペスは重症化するため、要注意だ。気になる場合は、抗体を持っているかどうかの検査を受けることもできる。

発症すれば自分自身が煩わしい思いをするだけでなく、周囲の人にも感染の危険が及ぶ口唇へルペス。Sさんのように再発を繰り返す人は、一度専門医に相談してみるといいだろう。
(談話まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/06/22号、本田 まりこ=東京慈悪会医科大学附属青戸病院(東京都葛飾区)皮膚科診察部長]

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