【体温を上げ免疫力を向上】

最近、風邪を引きやすく、体温を測る機会が増えたJさん(52歳)。
平熱を改めて測ると35度台で若い頃より随分低くなっていることに気づいた。

最近、平熱が36度以下の低体温の人が増えている。低体温になると免疫力が落ち、病気にかかりやすくなる。体温が低くなるのは血流が悪いためでもあるが、体の免疫システムの要となる白血球は、血流が悪いとその能力が十分に発揮できない。加えて体温が低くなると、白血球の働きを助ける酵素の活性も鈍るため、免疫力が低下するのだ。体温が1度下がると、免疫力は30%落ちると言われている。

そもそも、血流が悪くなるのはどうしてだろうか。まず、加齢や生活習慣によって動脈が硬くなると、血流障害が起きる。動脈硬化を起こす要因には、高血圧、喫煙、糖尿病、高コレステロール、肥満などが挙げられる。

また、自律神経のバランスが崩れることでも、血流障害は起きる。自律神経には交感神経と副交感神経があるが、交感神経の過緊張は、活性酸素を発生させ、血液をドロドロにして血流障害を招く。過緊張となるのは、働き過ぎなどによる精神的ストレスや睡眠不足などのほか、薬が原因となることもある。最も身近な薬としては、鎮痛解熱剤が挙げられる。度重なる服用は避けた方が賢明だろう。

一方、不規則でだらしない生活と運動不足が最大の原因となる副交感神経の過緊張でも、血流障害が起き低体温となる。

いずれの過緊張でも低体温になるのだが、日本人はどちらかというと交感袖経の過緊張が起きやすい民族である。思い当たる節がある場合は、心身を休めて副交感神経が働くようにバランスを取ると、血流障害を起こす確率も低くなる。下半身浴などで体を温めるのもよいだろう。

また、質の悪い睡眠や運動不足、ネガティブ思考、カフェインの過剰摂取、喫煙などの心身へのストレスで、ホルモン分泌に携わる副腎が疲労し、コルチゾールというホルモンが不足する副腎疲労症候群になっても、自律神経のバランスが崩れ、血流障害が起こる。

歩くことで基礎代謝をアップ
基礎体温を上げるには、血流障害を起こす生活習慣を改めるとともに、筋肉を鍛える必要がある。筋肉を鍛えると基礎代謝が上がり、基礎体温も上がるのだ。筋肉は意識して鍛えなければ、加齢により減る一方である。ちなみに体温が1度上がると、就寝中も30分歩くのと変わらないエネルギーを消費するようになり、太りにくい体にもなる。

多忙なビジネスバーソンにとって、運動時間を作るのは至難の業に違いない。しかし、ほんの少しの心がけで、筋肉は鍛えられる。筋肉の7割は下半身にあるので、今以上に歩く機会を増やすといい。特に階段の上り下りは効果が高い。エレベーターの使用をやめるだけでも運動量は違ってくる。帰宅時に1駅手前で電車を降りて、家まで歩くようにするのもいいだろう。こうした心がけの積み重ねで、健康になれることを覚えておいてほしい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/05/25号、斎藤 真嗣=メディカルスキヤニング溜池山王クリニック(東京都港区)前院長 米国ニューヨーク州医師]

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