【骨の炎症に至ると危険な掌蹠膿疱症】

激しい胸痛を感じ総合病院へ行ったAさん(50歳)。内科や外科では原因が分からなかったが、 手足にできていた水痘から、皮膚科で掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断された。

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の土踏まずなどに小さな水痘ができ、やがて黄色い点が水疱の中心に現れて膿みがたまった膿疱になる病気だ。患者数は数万人程度で、中高年の女性がかかりやすい傾向にある。

Aさんのように激しい胸の痛み(胸鎖肋関節症)や腰の痛みなどを感じる例は、患者さん全体の1割程度。骨や関節の炎症を調べる骨(こつ)シンチグラフイーという検査をすると、全体の半数近くは体のいずれかの骨か関節に炎症が見られ、放置すれば骨が溶けて変形する恐れもある。

胸が痛むと心臓の疾患を疑ったり、腰や指などの関節に痛みがあると内科や外科などを受診する患者さんが多いが、それでは正しい診断ができない場合がある。手足に膿疱がある場合は、 皮膚科を受診してほしい。

原因不明でも治療は可能
膿疱に触れると感染するのではないかと不安を覚える人もいるが、掌蹠膿疱症はほかの人には感染しない。だが、膿疱が破れて手のひらなどの皮膚が荒れたような状態になるので、人目が気になり、引きこもりがちになる人もいる。水痘・膿疱は平均すると3〜5年程度で自然に治るものの、QOL(生活の質)を考えると、早期に皮膚科を受診して治療することを勧める。

この病気は無菌性(無ウイルス性)膿疱症で、膿の中に菌やウイルスは存在せず、免疫系の細胞である白血球のみが存在することが分かっている。だが、その理由はまだ明らかになってい ない。

ただし、治療法はある。扁桃炎や歯周病・虫歯などの炎症が原因の場合は、これを治す「病巣感染の治療」で、掌蹠膿疱症も完治する。また、ごくまれに金属アレルギーが原因で掌蹠膿疱症になる患者さんもいる。このケースでは、入れ歯やアクセサリーなどの金属を外すと治る。

全体の7〜8割の患者さんは、原因となる扁桃炎などが見つからず、対症療法で膿疱を抑えることになる。塗り薬による外用療法では、ステロイド、活性型ビタミンD3、サリチル酸ワセリンなどを用いる。紫外線を当てる光線療法を行う場合もある。

胸に激しい痛みを感じるなど症状が進行した場合は、薬を飲む内服療法も行われる。投与する医薬品は、ステロイド、角化症治療薬、抗炎症剤などから、その人の症状に応じて選ぶ。また、なぜ効くのかという理由(エビデンス)は分かっていないが、ビタミンの一種であるビオチンが効く患者さんもいる。なお、女性の患者さんの9割に喫煙の習慣が見られるため、禁煙を勧めている。

患者さんの中には、膝や頭、爪の下などに膿疱ができる人もいる(掌蹠外皮疹)が、この場合の治療法も基本的には同様だ。膿庖やそれに伴う関節の痛みを感じた時は、皮膚科の医師に相 談してほしい。
(談話まとめ:佐藤 千秋=企画編集部)

[出典:日経ビジネス、2009/05/11号、照井 正=日本大学医学部(東京都板橋区)皮膚科学系皮膚料学分野教授]

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