【新たな国民病「CKD」をもっと知ろう】

会社の健康診断でたんばく尿を指摘されたFさん(52歳)。
腎臓内科の受診を勧められたが、特に調子の悪さは感じない。様子を見ていてもいいだろうか。

CKDとは「Chronic Kidney Disease」の略で、慢性腎臓病と訳される。専門用語としては「renal」だが、あえて「kidney」としたのは、米国では腎臓を表す言葉として一般に浸透しているからだ。つまりCKDという言葉には、この病気のことを広く理解してほしいという、世界中の腎臓専門医の願いが込められている。

ではなぜ、腎臓専門医がCKDへの理解を求めるのか。1つはCKDが進行性の病気だからである。放置すれば確実に末期の腎不全に移行し、透析治療が必要になる。もう1つは、CKDが 脳卒中や心筋梗塞など心臓血管系の病気の重大なリスクになるためだ。

末期腎不全への進行を阻止し、心臓血管系疾患を予防するためには、1300万人もいると言われるCKDの患者さんを早期に発見して治療のレールに乗せなければならない。 CKDのうち、悪化すると人工透析が必要になる3大疾患は糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、それに高血圧による腎硬化症。糖尿病性腎症と腎硬化症は心臓血管系疾患の大きなリスクでもあり、末期の腎不全になる前に脳卒中や心臓病にかかる危険がある。一方、慢性糸球体腎炎は腎臓に限定された病気だが、放置すればやはり末期の腎不全に移行する。

しかし、これらCKDは腎機能がかなり悪化しないと自覚症状(全身倦怠感、疲労感、浮腫、食欲不振など)がない。自覚症状が表れるのは、正常な腎機能を100点とすれば、10〜15点 程度になってからだ。CKDの早期発見には、定期的な検査が必要である。

CKDは微量アルブミン尿、たんばく尿などの尿異常から、徐々に腎機能が低下する病気なので、健診でたんばく尿を指摘されたら、まずは受診してほしい。病院では検尿によるたんばく尿の出現(3カ月以上続くたんばく尿)と腎機能を評価して診断する。そして、糖尿病や高血圧があれば腎機能が低下している可能性がある。

早期の発見で進行を阻止
CKDは進行すると元には戻らないが、早期に発見して治療すれば進行を阻止できる。血圧と血糖の厳格な管理、腎保護作用のある降庄薬(ARB、ACE阻害薬)の使用、高脂血症の管理、低たんばく食、CKDに特有な腎性貧血の改善に加え、減塩も非常に重要だ。私たちの施設では、CKDの患者さんをおよそ850人診ているが、長い臨床経験から減塩がCKDの進行抑制に有効であることが分かっている。

CKDの早期発見・治療には、第一線の臨床医が適切な腎機能評価を習慣にするとともに、一般の人たちのCKDに対する理解が不可欠だ。自覚症状が出てからでは遅いのである。米バラク・オバマ大統領のスローガン“Yes,We Can”“NewEraofresponsibility(新しい責任の時代)”にあやかり、「やればできる」そして「自分の体に対する自己責任」を心がけたい。
(談話まとめ:田野井 真緒=医学ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/05/04号、栗山 哲=東京都済生会中央病院(東京都港区) 腎臓内科部長]

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