【脳梗塞を予知する新検査法】

人間ドックでは異常なしだったが、脳梗塞で倒れたHさん(58歳)。
幸い後遺症は軽かったのだが、なぜ予知できなかったのかとショックを受けている。

脳梗塞や心筋梗塞は日本人の死因の上位を占め、一命を取り留めたとしても、要介護状態になったり、 リハビリに苦しんだりする率が高い。特に脳梗塞は寝たきりの高齢者を増やしている。その医療費は国の財政を庄迫していると言っても過言ではない。

脳梗塞も心筋梗塞も血管の狭窄や閉塞が原因だが、それには動脈硬化や堆積した「血管プラーク」が大きく関係している。血管プラークとは、血管内膜にこびりついた脂肪などの塊だ。これらが血液の流れを悪くし、時にはがれ落ちて血栓となり、細い血管を塞いで脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす。

その危険度を測る手段に、頚動脈超音波(エコー)検査がある。頚動脈のプラークをチェックするのだが、この検査で異常がなくても、脳梗塞や心筋梗塞で倒れる人は後を絶たない。

ある時、心筋梗塞で入院していたという愚者さんの頚動脈をエコーで見てみた。すると予想に反してそこには異常が見られず、たまたまチェックした右鎖骨下動脈に、うずたかく堆積しているプラークを発見した。血管が分岐して緩やかにカーブしている右鎖骨下動脈は、ほぼ真っすぐな形状の頚動脈よりプラークがたまりやすいようだ。

この右鎖骨下動脈は、通常は検査する場所ではない。「もしや、この場所をチェックすると脳梗塞や心筋梗塞の予知が可能なのでは?」と考え、600人以上のデータを集めて調査。その結果、右鎖骨下動脈のプラーク堆積度と脳梗塞、心筋梗塞といった血管プラークが関係する疾病の因果関係が確認され、右鎖骨下動脈が、頚動脈以上にこれらの病気の予知に有用であることが判明した。

体に負担がないエコー検査
昨年、右鎖骨下動脈のエコー検査の有用性を示す論文を学会誌に発表したが、後に大腿動脈や腹部大動脈での検査も有用だと判明。右鎖骨下動脈と併せれば脳梗塞などの予知が可能という確信を得て、一般向けにも『脳梗塞・心筋梗塞は予知できる』を出版した。

エコー検査では0.1mm単位でプラークの厚みが測れる。コレステロール値もそうだが、いくら数値でそのリスクを指摘されても、多くの人は自覚症状がないとなかなか生活改善に至らない。しかし、プラークで狭くなった血管の様子をエコー写真で見せられると、大概の人は生活改善への真剣味が増すようだ。やはり、視覚に訴えられると衝撃度も違うのだろう。

エコー検査は、体にかかる負担がなく、しかも検査したその場で結果が見え、費用も安く済む。現在行われている成人向け健康診断にこのエコー検査を導入し、脳梗塞、心筋梗塞予備軍とされた人たちが生活習慣を改善すれば、確実に将来の医療費を抑えることができる。医療関係者のみならず、一般の多くの人々にもこの検査法を知ってもらい、病気の予知に役立ててもらいたいと願ってやまない。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/04/13号、真島 康雄=真島消化器クリニック(福岡県久留米市)院長]

戻る