【全身が激しく痛む線維筋痛症】

心配事で不眠気味のAさん(50歳)。
激しい体の痛みまで感じるようになり、痛みの広がりに我慢できずリウマチ科を受診すると、線維筋痛症と診断された。

線維筋痛症(FM=Fibromyalgia)は、全身に激しい痛みを感じる病気だ。厚生労働省の調査によると全 国で200万人以上の患者がいて、その80%は女性であることが分かっている。まだ原因が解明されておらず、決定的な治療法が確立されていない。

しかも、医師の間での認知度が低く、この病気と診断され治療を受けた患者は年間4000人ほどにとどまっている。Aさんのように激しい痛み(疼痛)を感じるほかに、不眠や鬱病、過敏性大腸炎、膀胱炎などの症状もあるため、リウマチ専門医や精神科・心療内科、内科などを受診しても診断がつかずに様々な病院を渡り歩く例もある。

実際、症状が似ているため、脊椎関節炎や関節リウマチなどのリウマチ性疾患、複雑性局所性痺痛症候群などの整形外科疾患、自律神経失調症などの心療内科疾患、鬱病などの精神疾患などと鑑別する必要がある。

厚労省の線維筋痛症研究班が、今春までに診断マニュアルの作成を目指しており、2月にその概要を公表した。線錐筋痛症は、CT(コンピューター断層撮影装置)などの画像診断や血液検査を行っても異常が見つからないが、このマニュアルには「広範囲の疼痛の既往があり、触診で18カ所の庄痛点のうち11カ所以上に庄痛を認める」場合に、線維筋痛症と診断すると明記されている。これにより、正しく診断される患者が増えることが期待できる。

ここで言う庄痛点とは、後頭部、下部頚椎、僧帽筋、棘上筋、第2肋筋、外側上顆、背部、大転子、膝(内側)の9カ所で、左右1カ所ずつあるので、合計18カ所となる。

線維筋痛症が発症するきっかけは、外的要因と心因性の要因に大別される。外的要因としては、抜歯や脊椎外傷、手術、むちうち症などの身体的障害が引き金になる。心因性のものは、離婚、死別、別居、解雇、経済的困窮といった慢性ストレスが挙げられる。

治療は症状に応じて
治療法としては、痛みに対してガバベンチンなどの処方が効果を上げている。だが、痛みは少しずつ軽くなるため、患者は治療に対する満足感を得にくい。腰を据えて治療をする覚悟が必要になる。

また、鬱症状に対してはミルナシプランや抗不安剤などを、筋肉の付け根部分の炎症にはサラゾスルフアピリジンなどが処方される。

患者ごとに異なる様々な症状に対応するため、総合診療科、リウマチ科、精神科などの医師が協力して治療に当たる「リエゾン医療」が必要になる。

線維筋痛症は難病ではあるが、早期に治療を開始すれば完治する。上記のような症状があり、身近に専門医が見当たらない場合は、聖マリアンナ医科大学の「線維筋痛症医療情報センター」(http://www.marianna-u.ac.jp/ims/soudan/fms/)へ問い合わせてみるといいだろう。
(談話まとめ:佐藤 千秋=企画編集部)

[出典:日経ビジネス、2009/03/30号、西岡 久寿樹=聖マリアンナ医科大学〈川崎市宮前区)教授. 難病治療研究センター長]

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