【息切れするので心臓が心配】

運動不足で太り気味のせいか、階段を上る時に息切れがするようになったSさん(53歳)。
父親を心筋梗塞で亡くしているので心配だ。

心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の一部が藷まり、心筋の一部が死んでしまうことで起こる。それ以前に胸の庄迫感などの自覚症状が出ることもあるが、あまり症状がないか、あっても気づかないこともある。特に男性は、女性よりも心筋梗塞のリスクが高いので、注意が必要だ。

心筋梗塞のリスクは、男性、糖尿病、肥満、高血圧、高コレステロール血症、また家族に心筋梗塞歴がある、50歳以上などに当てはまるとより高まる。息切れだけでは何とも言えないが、Sさんは50歳以上の男性で、肥満、家族歴もあるので、そのリスクはそうでない人よりもずっと高くなると言える。

体への負担が少ない検査
Sさんのような人に対しては、私なら心臓核医学検査の「運動負荷心筋シンチグラフイー」という検査を勧める。これは、静脈に微量の放射性同位元素を注射して、そこから放出する放射線を撮影する仕組みの検査だ。心機能や血液の流れを調べることができる。安静にしている状態と、運動をして心臓に負担をかけた状態とで検査する。

これにより、血管の内部が細くなって血が流れにくくなっている「虚血」の部分があれば明らかになる。同時に、心臓の血を送り出すポンプとしての機能の程度も把握できる。運動負荷心電図検査よりも、より詳しく心筋の状態を知ることが可能だ。

検査で虚血が見つかった場合には、薬による治療を始めたり、さらに検査を行って手術で詰まりかけている血管を広げるなどの治療を行うことになる。逆に検査で異常が見つからなかった場合には、2〜3年のうちに心筋梗塞を発症するリスクは、極めて小さいことが確認できる。この検査はまた、過去に心筋梗塞を発症したことがある人についても、それがどの程度心臓機能に影響を与えたのか、また今後再発しそうな部位はあるかどうかなどを見極めることができる。

さらに心筋シンチグラフイーは、足腰が弱くなり、検査の際にトレッドミル(ランニングマシン)で歩くことが難しい高齢者などにも適している。そうした場合には、薬の作用で心臓に負荷をかけて、検査をすることができるからだ。所要時間は約3時間で、事前の準備はいらない。

ただし、造影剤として放射性同位元素を使うので、放射線への被曝は避けられない。といってもその量は、だいたい胸部]線撮影と同等と考えていいだろう。その点を除けば、痛みもなく、体への負担の軽い検査だと言える。

また、治療費が高額になってしまうのも難点だ。米国では医療保険が適用されることが多いが、そうでない場合は1200ドル(医師の診察料も含む)程度かかる。だがSさんのようにリスクの高い人には、決して高い検査ではないはずだ。日本で検査を受けたい場合は、大学病院や専門クリニックなどに問い合わせてみるといいだろう。
(談話まとめ=當麻 あづさ=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/03/09号、デイクラン・ボラニアン=ファミリーヘルスセンター(米国ハワイ)院長]

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