【結核と似て非なる肺MAC症】

咳が止まらず、痰が出て、倦怠感もあったAさん(50歳)。
血痰が出たことをきっかけに呼吸器の専門医を受診したら、肺MAC症と診断された。

肺MAC症(Mycobacterium avium complex)は非結核性抗酸菌症の一種で、マイコバクテリウム・アビウムという菌が肺に感染した病気だ。非結核性抗酸菌症の80%以上を肺MAC症が占めている。男性より、中高年の女性に発症することが多い。

初期には咳や痰といった症状が表れ、倦怠感や発熱、体重減少、さらには血痰が出る時もある。結核と症状は似ているが異なる病気で、ヒトからヒトに感染せず、すぐに生死に直結するようなこともない。

Aさんのように、その症状から結核を疑い受診して見つかるケースのほか、健康診断などで行ったCT(コンピューター断層撮影装置)検査の画像に影が映り発見されることがある。こ れまでは、胸部CTで肺MAC症が疑われても、咳や痰などの症状がなければこの病気と認められなかったが、現在では具体的な症状がなくても認められるように、診断基準が改められた。

ただし、呼吸器科以外の医師は、肺MAC症を知らないこともあるので、専門医の受診を勧める。呼吸器科の医師であれば、痰などから採取した菌に対して遺伝子検査を行い、結核菌に感 染したのか、非結核性の菌なのかを容易に判別できる。

実は、この肺MAC症は世界的に増加傾向にあろ。日本では特に増えているが、その原因は分かっていない。マイコバタテリウム・アビウムはどんな環境にでもいる菌である。現在分かっ ていることは、親子や兄弟など親族に肺MAC症を発症した人がいると、そうでない場合に比べて発症リスクが高いということだ。そのため、体質に関連していると考えられている。

治療は専門医と相談して
肺MAC症は、緊急の治療が必要とは限らず、隔離も不要だが、放置しておくと数カ月単位で進行して呼吸不全に陥る場合もあるので、医師の指導を仰ぐべきだ。半面、完全に殺菌できる 薬剤がないため治療は長期にわたるので、治癒させにくい病気とも言える。

従来は、治療薬としてクラリスロマイシンに、エタンブトールやリファンピシンを加えて処方されてきたが、肺MAC症には保険適用が認められていなかった。しかし、2008年秋に、非結 核性抗酸菌症の治療薬として(リファンピシンと同系の)リフアブチン(商品名:ミコブティン)が承認されて保険適用となった。また、クラリスロマイシンも保険適用が認められた。

ただし、30代など若い患者や妊娠を希望する患者の場合は、治療薬の副作用を軽減し、短期間での治癒を図るために、菌に感染した肺の一部を手術で切除する治療方法が望ましい場合がある。

患者それぞれで進行が異なり、最適な治療方法も異なるので、病状が軽いからといって放置せずに、呼吸器の専門医を受診して、自分に合った対処法を相談してほしい。
(談話まとめ:佐藤 千秋=企画篇集部)

[出典:日経ビジネス、2009/02/23号、倉島 篤行結=核予防会複十字病焼(東京都清瀬市) 臨床研究アドパイザー 結核研究所顧問]

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