【激しい運動、ストレスによる過呼吸】

マラソンレースのゴール直後、呼吸困難と手足の痺れを感じてパニックになったSさん(46歳)。
救護係に「過呼吸でしょう」と言われ、しばらくしたら治まったのだが。

適呼吸とは、医学的に言うところの過換気のことであるも呼吸をして体に酸素を取り入れ、二酸化炭素 を吐き出す「換気」が過度に行われることを指し、血液中の二酸化炭素が減少するために、息苦しさや手足の痺れを感じるなどの症状が表れる。

息苦しいと感じるために、さらに大きく息をしようと何度も呼吸を繰り返すと、症状はますますひどくなる。意識がもうろうとし、まれに失神するケースもあるが、過換気によって呼吸困難となり死に至るということはないし、重篤な後遺症が残ることもない。健康な人でも、1分間に30回以上の呼吸をするとこのような症状が表れるので、体に異常があるために起こるというわけでもない。

頻繁に過換気を起こす場合は、過換気症侯群と診断される。その場合の発症原因のほとんどは、不安や興奮、ストレスといった心因的要因にあり、パニック障害の一症状として扱われることも少なくない。

患者さんには若い女性が多いのだが、会議前になるとよく発作を起こすという中高年のビジネスマンもいる。また、Sさんのように心因的要因はなくとも、激しい運動によって呼吸が乱れ、過換気を起こすといったこともある。マラソンレースやテニスの試合などで、頑張り過ぎた時に起こりやすいようだ。ロックコンサートでアーティストが過換気で倒れることもある。心因的要因でも、運動などによる生理的 要因でも、過換気を起こした時には、呼吸をゆっくりにし安静にしていると、症状は治まっていく。

ほかの病気の可能性も考慮を
週換気のために血液中の二酸化炭素が減少すると、通常、中性であるべき血液のpH値が上がってアルカリ性となり、呼吸性アルカローシスとなる。それによって電解質のバランスが崩れ、結果的に痺れやめまいが起きてしまうのである。

息苦しさや手足の痺れを訴えて救急外来を受診する患者さんの中には、過換気で呼吸性アルカローシスを起こしている人も少なくない。動脈採血をして調べれば、アルカローシスになっているかどうかはすぐに分かる。しかし、問診や点滴をするうちに、症状が治まっていくことも多く、中には病院に到 着した時点で安心して、受診する前に症状が治まってしまうという患者さんもいる。

心因的要因で何度も発作を起こす患者さんの場合は、心療内科を受診することをお勧めするが、息苦しさを訴える患者さんの中には、呼吸器系の疾患や、循環器系の疾患を抱えている場合もある。手足の痺れは脳疾患の症状にもあるし、糖尿病といった代謝性疾患の一症状でも呼吸困難に陥ることがある。過換気以外の病気であることを見落とさないためにも、初診は内科、もしくは呼吸器科を受診するのが望ましいだろう。
(談話まとめ:仲尾=匡代:医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/02/16号、木戸 健治=順天堂大学医学部附属練馬病院(東京都練馬区)呼吸器内科長]

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