【視野の中心がゆがむ】

「視野の中心が暗くて見えにくい」と、眼科を受診した0さん(62歳)。
検査の結果、加齢黄斑変性と診断された。どのような治療法があるのだろうか。

加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑の老化により、視機能が低下してくる病気だ。

自覚症状としては、Oさんのように視野の中心だけが見えにくくなったり、「ものがゆがんで見える」などと訴えることが多い。

病気の原因には、黄斑がある網膜の下に病的な新生血管が発生することが知られている。新生血管は破れやすいため、血管から血液成分や老廃物が滲出し、黄斑を押し上げて浮腫を生じることで、視力が低下していく。

加齢に伴って発症することが多く、欧米では失明原因の第1位となっている。日本人の有病率は50歳以上の1%前後と言われており、そのうち3〜4割の患者が両眼に発症する。患者の平均年齢は72歳と、比較的高齢者に多いのも特徴だ。

1990年代までは加齢黄斑変性に有効な治療法がなかったが、2004年に光線力学的療法(Photodynamic therapy=PDT)という治療法が登場し、多くの患者で施行されるようになった。

PDTは、あらかじめ患者の腕から新生血管に取り込まれる光感受性物質の薬を注射し、その薬にだけ反応するレーザーを照射して、網膜などの正常な組織を傷つけずに、新生血管のみを閉塞させる治療法だ。

PDTは認定医のいる医療機関でしか受けることはできないが、現在では全国200施設以上の医療機関で実施されている。治療には2泊3日の入院が必要だ。

保険が適用されるので、患者負担は3割負担で1回約12万円ほどになる。ただ、1回では不十分なことが多く、通常は複数回受けることになる。

PDTが全国的に普及している一方で、最近では薬物療法も行われている。新生血管が増えてくる原因になる血管内皮増殖因子(VEGF)を抑制する効果のある薬を、眼球に4週間ごとに注射する。

診察料などを含めると、1回当たりの患者負担は3割負担で4万円程度。薬物療法であれば、基本的に入院は必要なく、外来で行えるというメリットもある。

現在も研究が進められており、PDTや薬物療法のどちらを選ぶかは、患者の病態に応じて選択されているのが現状だ。さらに最近では、病態を詳しく把握できる画像診断の技術も向上しているため、早期からの治療が行えるようになっている。また、視野が良好な 初期の患者に適応できる「低レーザーフルエンスPDT」という方法も試みられている。

加齢黄斑変性は、完全に治癒することは難しく、治療を早めに開始して視力を維持することが重要な病気だ。そのため、少しでも気になる症状があれば、早期に眼科を受診することをお勧めしたい。
(談話まとめ:和田 紀子=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2009/01/19号、白神 史雄=香川大学医学部附属病院(香川県三木町)眼科教授]

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