【疲れた体は座禅で癒やす】

朝日覚めても、スツキリしないKさん(47歳)。
何か運動をと思っていた矢先、“活力がみなぎる”という座禅のことを知った。

近年、禅寺で週末などに行われている「座禅会」の人気が高まっているという。座禅というと、心身ともに癒やされるという漠然としたイメージがあるが、それには科学的な根拠もある。

座禅が人体によい影響をもたらす理由は、その呼吸法にあるのだ。

通常、私たちが行っている呼吸は、息を吸うことが中心で、脳にある延髄の指令で横隔膜を収縮させる自律呼吸。一方、座禅での呼吸は息を吐くことが中心で、大脳皮質が命令して腹筋を思いきり収縮させる腹式呼吸だ。

この、腹式呼吸を意識してゆっくり行うことで、大脳にあるセロトニン神経を活性化させてくれることが、座禅の最大の効能だと言われている。

セロトニン神経とは、左脳と右脳の縫い合わせ部分にある、数万個しかない小さな神経だ。しかし、内分泌・自律神経・免疫などの機能を調整する視床下部や、思考・創造・意思・情緒などに関係する前頭葉などに働きかけ、人体の生体機能全般に大きくかかわっている。活性化すると、心身が適度に緊張して、心と体に活力をみなぎらせてくれる重要な神経なのだ。

セロトニン袖経を活性化させるには、一定の運動を繰り返すリズム運動が有効である。ウォーキングやジョギングのほか、ガムなどをかむ咀嚼運動でもいい。そめ中でも、腹式呼吸をゆっくりと繰り返す座禅は、手軽にできる方法なのだ。

座禅をするのにわざわざ禅寺へ行く必要はない。自宅や職場で毎日続けてみるだけでいい。まず、いすに浅く座り、両手をへその下(丹田)に当てる。目は閉じると雑念が入りやすいので、開けておく。

姿勢が整ったら、お腹がへこんでいくのを意識しながら、息を口からゆっくり吐いて、吐いて、吐ききる。吐ききったら、今度は鼻から息を吸い込む。吐く時間の目安は10〜15秒くらいだが、鼻から吸う時は、時間は測らず自然に任せる。そしてまた、吐いて、吐いて…というふうに、腹筋を収縮させるリズム運動を繰り返す。

座禅は、最低5分間、長くて30分くらい行うと、大脳からα波の一種であるα2という特殊な脳波が出ることが確認されている。このα2は、気持ちが落ち着き、気分をスツキリさせる覚醒をもたらしてくれる。心理的には、緊張や不安が取れ、元気がみなぎって くるのが感じられるだろう。

また、セロトニン袖経は、背骨を立たせる姿勢筋と抗重力筋という筋肉にも作用するため、座禅を行った後は背筋が伸び、顔つきが引き締まる効果もある。

座禅は朝に行うことをお勧めする。たった5分間でも毎日続けていくことで、体がシヤキッと目覚めて、爽快な気分で仕事をスタートさせることができるようになるだろう。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2009/01/05号、有田 秀穂=東邦大学医学部(東京都大田区)統合生理学教授]

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