【インスけン注射はやめられる?】

2型糖尿病のため、ついにインスリンの自己注射を勧められたSさん(55歳)。
一生、注射を続けると思うと不安でたまらない。

糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病の2種類がある。血糖値を調節するホルモンであるインスリンを 膵臓が作れなくなるのが1型、肥満や運動不足といった生活習慣が引き金で、インスリンが出にくくなったり効 きにくくなったりするのが2型だ。

わが国の糖尿病の9割以上が2型で、成人になってから発症する糖尿病は、ほぼ2型と考えていい。2型糖尿病の治療には、飲み薬によって体内のインスリン分泌を促す方法や、注射でインスリンを外部から補充する方法などがある。一般的には糖尿病が進んで くると、インスリン注射を選ぶことになる。

では、インスリン注射は一生やめられないのか。2型糖尿病では、必ずしもそんなことはない。

一昔前まで、インスリン注射と言えば飲み薬が完全に効かなくなってから最後の手段として使うことが多かった。そうなると確かに一生やめられないことが多いのだが、ここ最近は考え方が変わりつつある。早めに血糖値を安定させれば、インスリンを作る力の弱まった膵臓が、再び機能を回復するということが分かってきたからだ。

現在は、糖尿病が比較的軽症の時から積極的にインスリンを使い、できるだけ早く血糖値を安定させる方法が主流となっている。Sさんもインスリン注射を勧められたからといって、必ずしも一生続けなければならないところまで病気が進んでいるとは限らない。

インスリン注射や食事・運動療法などをきちんと行えば、血糖値が安定してきて、飲み薬に戻せる可能性が出てくる。その基準として、私たちの病院では経験的に切り替えが成功しやすいところで線引きした。具体的には、インスリンの使用量が1日17単位以下、HbA1cが6.5%以下、空腹時の血糖値が130mg/デシリットル以下というものだ。食事制限や運動療法を継続できそうかということも、重視している。

インスリン注射を飲み薬に戻す方法は、それぞれの医師によって異なる。私の病院では、注射を飲み薬に段階的に切り替えていく方法を取っている。例えば、朝、昼、夜とインスリンを注射している人なら、まず昼の注射を飲み薬に切り替える。それで血糖コントロールができるようなら、次は夜の分を、最後に朝の分といった具合だ。

糖尿病治療は自分の生活に合った方法を選んでほしい。例えば、食事が楽しみで制限したくないという人は、逆にインスリン注射を続ける方が生活の質が高まるだろう。一方で、会社勤めの人には、平日昼だけ注射を飲み薬にしたり、旅行中の注射が煩わしい人には、その間だけ飲み薬に替えるといったアレンジもできる。

まずは早めにインスリン注射を始めて血糖を安定させること。そうすればインスリンをやめるという選択肢も広がってくるだろう。
(談話まとめ:江本 哲朗=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2008/12/22・29号、小谷 圭=神戸労災病院(神戸市中央区)糖尿病内料部長]

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