【全身浴と半身浴】

入浴中の死亡事故は年間1500〜1600件もあると言われる。死因の大半は心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳卒中、溺死で、その7割が65歳以上だ。

貝原益軒は『養生訓』の中で入浴法を事細かく書いているが、入浴時の適温は38〜40度。この程度の温度のお湯に20分ほどつかると副交感神経系が亢進してリラックス効果が高まる。湯の温度が42度を超えると、交感神経が刺激されて血庄が20〜30mmHgも上昇することがある。血圧の急激な上昇は虚血性心疾患や脳卒中の誘因になるので、高齢者や高血圧の人の高温浴は避けなければならない。

入浴法としては心臓に負担をかけない半身浴がよいと言われるが、水深が浅ければ水圧はあまりかからない。心臓や呼吸器系に負担をかけないためには、浅い浴槽での全身搭がいい。高血圧がある、心臓に負担をかけたくない、全身を湯船に沈めないと風呂に入った気がしないという方は、浅めの浴槽で寝浴をするといいだろう。

健康な人の健康維持を目的とするなら、全身浴と半身浴を繰り返すと効果的だ。血液の分布を調節する機能が訓練されて血液循環がよくなり、末梢まで血液を行き渡らせることができる。

温泉学の第一人者である北海道大学の阿岸祐幸名誉教授は、脳波測定を行い、感性スペクトラム分析という方法で入浴前後でのストレスや喜び(やる気、達成感、満足感)、悲しみ、リラクゼーションの度合いを評価している。それによれば、入浴後ではストレスが少なくなり、リラクゼーションの度合いが高くなったと報告している。

[出典:日経ビジネス、2008/12/15号、田野井 正雄=医学ジャーナリスト]

戻る