【突然はがれる足の爪】

突然、足の人さし指の爪がはがれてしまったBさん(46歳)。
痛みはないが、数週間前にマラソンで足の指を痛めていた。爪が元通りになるか心配だ。

マラソンレース後、しばらくしてから足の指の爪がはがれたというランナーの話をよく耳にする。恐らく、足に合わない靴を履いて走ったために爪に負担がかかり、一時的に爪が作られなくなったことが原因だろう。

足に対して大きすぎる靴を履いて走ると、足と靴の間にスペースができてつま先が何度も靴の内側にぶつかり、爪の根元に衝撃が加わる。爪は、爪の根元の爪母(そうぼ)という場所で作られているのだが、この爪母に衝撃が加わると、一時的に爪が作られなくなってしまう。その結果、爪が途中で途切れて、次に作られた爪が伸びてくるとそれに押し上げられることで、前からあった 爪がはがれてしまうのだ。

さらに、長時間走ることで、指腹(足の指の裏)に過度の圧力が加わり、指腹の肉が爪の両脇に押しのけられて、爪の両端を押し上げるカが生じることも影響していると思われる。爪がはがれやすい状況になっていたのである。

爪母は、爪が目に見える部分より根元、足の爪で言うと甘皮の5mmほど手前にあるため、新しい爪が伸びてくるまでは、なかなか爪の損傷に気づかない。症状が現れるまでに数週間かかることにもなるので、ある日突然爪がはがれて驚く人もいるだろう。

爪が自然にはがれたのであれば問題はないが、取れそうになっているからと無理にはがすのはよくない。爪には、そうしょう 爪床(そうしょう;爪の下の皮膚)の肉を押さえ込む働きがあるのだが、それがなくなってしまうと爪床が浮き上がり、新しい 爪が生えてきた時に、巻き爪や刺し爪になる危険性もあるからだ。

新しい爪が生えてきて自然にはがれるまでは、爪をテーピングなどで固定しておいた方がいいだろう。また、爪がはがれた後、新しい爪が指先まで伸びるまでは、爪床の肉が盛り上がらないよう、指腹に圧力が加わらない歩き方を心がけることも重要である。

マラソンレースに参加するたびに爪がはがれていると、爪の生え方に支障が起きかねない。巻き爪や刺し爪を起こす可能性も高くなるので、予防するに越したことはないだろう。そのためには、足先に負担がかからないよう、足に合わせた靴を履き、靴紐をしっかり結んで足が靴の中で動かないように固定することが大切だ。ひどい巻き爪や刺し爪になると、マラソンどころか、歩行すら困難になることを覚えておいてほしい。

爪は本来、皮膚科が専門となるのだが、必ずしもすべての皮膚科医が爪に詳しいとは限らない。爪のトラブルは整形外科、形成外科で扱うことも多い。残念ながら爪医療に関しては、まだまだ立ち遅れている面も多い。当院の爪外来に訪れる患者さんの中には、間違った治療で症状を悪化させてしまっている人も少なくない。今後、爪に関する研究が重要視され、人々に正しい知識が広まることを期待したい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/12/15号、宮田 篤志=やはたクリ=ツク(東京都武蔵野市)院長]

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