【治らない咳は病気のサイン?】

風邪を引いて治った後も、咳や疾がしつこく続いていたEさん(40歳)。
うっとうしさから受診すると、別の病気が見つかった。

風邪(感冒)は万病のもととも言われるほど、人が最もよくかかる呼吸器の病気である。呼吸器の病気の 主な症状には、咳や疾、血痰、喀血、呼吸困難、胸痛などがある。中でも咳や痰は風邪が治ったと思っても、すっ きりと止まらず、うっとうしい思いをすることが多い。

咳は気道の中に侵入してきた異物を除去するための反射的な反応で、体の重要な防御機能を果たしている。その ため、上気道や下気遣だけでなく、ほかの病気から咳の発作が見られることもしばしばある。

咳の出ている期間によって、どんな病気が疑われるかを、ある程度判断することができる。出始めてから3週間 以内の急性の咳の場合、感冒、アレルギー性鼻炎、急性細菌性副鼻腔炎などが、3〜8週間程度続く亜急性の咳の 場合、気道感染症後の残遺性の咳、マイコプラズマ肺炎、気管支喘息、過敏性肺炎などが挙げられる。

2カ月以上続く慢性の咳の場合は、気管支喘息、後鼻漏症候群(鼻咽喉に流れ出た鼻汁に起因する疾患)、胃食 道逆流、鼻ポリープ、肺結核、肺ガン、心不全などが疑われる。

さらに、1日のうちにどの時間帯に咳が出るのかも、病気の判断の目安となる。例えば、起床時から午前中にか けて出る咳はびまん性汎細気管支炎、胃食道逆流などが、就寝後に出る咳は心不全や肺結核などが、夜明け前の咳 は気管支喘息などが考えられる。

そのほか、冷たい空気を吸入した時に咳が出る場合は気管支喘息や気道過敏症、人と会話をしている時に出る場 合は心困性によるものということも考えられる。

また、咳には痰がからむ湿性の咳と、空咳などの乾性の咳がある。湿性の咳は気遣内にある病原性徴生物などを含 む疾を排出するためのものであるため、あまりひどくなければ薬で無理に抑えなくてもよい。空咳は意外と体力 を消耗させるので、薬で止めた方がいいだろう。

痰の場合も、症状の持続期間や色、量、臭いなどにより、原因となっている病気がある程度予測できる。総じて 痰かなかなか切れず、黄色や緑色、鉄錆色などの色がある場合は、抗生剤による治療を受けるのが有効だ。

近年、肺の生活習慣病と言われるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者が増えている。喫煙者に起こりやすく、 悪化すれば次第に肺の機能が低下して、呼吸困難を来すこともあるこの病気も、長引く咳が特徴だ。また、肺ガ ンの初期症状でも咳や痰が見られ、そのほかの特別な症状は出ないことも多い。COPDから肺ガンに進行すること も少なくない。

重要なのは、風邪を引いてから2週間ほどしても咳や疾の症状が続く場合は、ほかの病気を疑い、病院で診察や 検査を受けることだ。

(談話まとめ=杉元順子=医療ジャーナリスト)
[出典:日経ビジネス、2008/12/01号、新井 基央=川崎市立多摩病院(川崎市多産区)呼吸器内科]

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