【血圧抑えるリンゴ療法】

1929年、ドイツの医学雑誌に「リンゴ療法」の効果が発表された。急性消化不良や赤痢など、1歳から5歳まで の52人の子供に下ろしたリンゴを2日間にわたって与えたところ、下痢はすぐ止まり、熱が下がったという。

当時、乳児の下痢による死亡率は高く、多くの国で追試が行われた。千葉医科大学の詫摩武人病院長は1941(昭 和16)年の日本小児科学会総会でリンゴ療法の効果はリンゴに多いペクチンによって腸内にビフイズス菌が多数出 現するためではないか、と述べた。

リンゴ療法をさらに世界に広めたのは、弘前大学の佐々木直亮名誉教授だ。かつて日本は世界で名だたる脳卒中王 国だった。とりわけ多いのは東北地方。原因として高血圧が指摘された。東北地方では1日の塩分摂取量が25〜 30gもあった。塩分の取り過ぎが血圧を上げ、脳卒中を多発させていたのだ。

不思議なのは、そうした塩分摂取の多い地域で、青森・弘前地方のリンゴ産地では血圧が低く、脳卒中も少なか ったこと。佐々木氏はリンゴにカリウムが多いことに気づいた。リンゴ産地ではリンゴの摂取量が多く、当然カリ ウムも多く取っている。そのカリウムが塩分の害を抑え、高血圧を防いでいるのではないのか。今から45年以上 前、高血圧の原因がよく分からなかった当時、この説は世界で注目された。

佐々木氏は人々を2群に分け、一方にリンゴを食べさせず、もう一方には好きなだけ食べさせた。すると、リン ゴを食べた人たちは血圧が下がった。血圧が上昇する冬の果物として、リンゴはやはり貴重である。

[出典:日経ビジネス、2008/11/17号、堀田 宗路=医学ジャーナリスト]

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