【口臭の原因にもなる舌苔】

仕事がハードで時間も不親則なTさん(47歳)。
ある時、「口臭がある」と妻に指摘され、初めて舌に蓄積する舌苔に気づいた。

鏡に向かって舌を出してみると、白色や淡黄色の苔のようなものがついているのに気づいたことはない だろうか。これは「舌苔(ぜったい)」と言い、死んだ細胞や新陳代謝ではがされた粘膜上皮の細胞、血球成分、食べ物の残渣などからできている。

舌の表面は、乳頭と呼ばれる絨毯のようなヒダで覆われている。この乳頭は、舌の中央から奥の方へと密生する 複雑な形状をしているため、ヒダとヒダの隙間に汚れが入りやすく、さらに奥の方に蓄積してしまう。体調が悪か ったり、不規則な生活が続くなど新陳代謝が乱れた時、あるいは口が渇きやすい口呼吸がクセになっている時は、 舌苔がつきやすいので注意した方がいいだろう。

舌苔は口中粘膜のアカのようなものなので、誰でも普通に付着するが、人によって厚みや色が違う。通常なら、 舌の奥の方が白っぼくなる程度だ。しかし舌苔が多いと、舌の前方までついたり、舌全体に厚く盛り上がることもある。喫煙やコーヒーの多飲などにより、茶色に変色する人も珍しくない。

舌苔自体は病気ではないので、必要以上に除去する必要はなく、思い悩むこともない。ただし、.舌に多く付着す ると、口臭の主原因となることは覚えていてほしい。

口の中には、何百億という細菌が存在し、これらが舌苔に含まれるたんばく質を分解して臭いのもととなる硫化 水素(卵の腐ったような臭い)などの臭気成分を作り出すのだ。

舌苔が多いと感じたら、起床直後に舌ブラシや軟らかい歯ブラシを使って舌の清掃を行うといいだろう。舌を思 いきり出し、嘔吐反射を防ぐために息を止める。水で濡らしたブラシをのどの奥の方へ入れ、舌表面を軽くこする という手順だ。1日に何回も磨いたり、力を入れて磨くと、舌表面にある味蕾(みらい)を傷つける可能性があるので、あくまでソフトに、を心がけたい。

舌苔を増殖させないために、口の中をチェックすることは重要だ。洗面所の鏡では、口の中は暗くて舌の奥まで 見えにくいため、明るい場所で、手鏡を用いて観察してほしい。舌、歯茎、歯など、口の中を手鏡でトータルに見 るクセをつけると、舌苔の状態はもちろん、虫歯から舌の前ガン症状まで気づくことができる。

口臭が気にならず、舌苔も通常量なら、口中チェックは歯磨きのついでに週1回程度で十分。舌苔が気になった 時だけ、除去すればいいだろう。口臭が気になる人は、毎朝1回除去する習慣を続けてみてほしい。

舌は、体の内臓と違って簡単に見ることができ変化に気づきやすい部位なのに、ほとんどの人が見ていない。し かし、健康のバロメーターと言われるほど体の状態を教えてくれるのだから、舌が自分に示すサインを、見逃さ ないようにしたいものだ。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/11/17号、川口 陽子=東京医科歯科大学大学院(東京都文京区) 健康推進歯学分野教授]

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