【激烈な腹痛が襲う急性膵炎】

「取引先との飲み会も仕事のうち」と言うKさん(51歳)。
深夜まで飲んで帰宅後、明け方に猛烈な腹痛が起こり救急車で運ばれた。

消化器の中でも、胃腸や肝臓の健康を心配する人は多いが、膵臓まで気にする人は少ない。膵臓は、長 さ約15cm、厚さ約2〜3cm、重さ100〜120gのほんの小さな臓器だが、体内で、実は大きな役割を担っている。

血糖値をコントロールするインスリンを分泌するほか、消化酵素である膵液を分泌し、炭水化物、脂質、たんば く質という3大栄養素の消化分解をしている。膵臓の中には膵管があり、消化液の膵液がここを通って十二指腸に 流れ、強力な消化作用が働いて消化活動が始まる仕組みだ。

その膵臓が急激な炎症を起こす急性膵炎が、近年増加している。1985年頃には年間1万5000人程度だったが、 現在は3万〜4万人と倍以上に増えているのだ。急性膵炎の原因は大きく2つあり、アルコールの多量持取が全患 者の約35%、胆石が約25%となっている。原因がアルコールの患者は男性が多く、50代が高い率で見られる。

アルコールは膵臓を刺激するため、多量に飲むと膵液の分泌が著しく増加し、膵管の圧力が高まり膵液が膵臓内 に滞留してしまう。また、アルコールの分解産物が膵臓の細胞に障害を起こす。その結果、負担のかかった膵臓自 体を、滞留した膵液の消化酵素が消化し始めるのだ。

急性膵炎は、お酒や脂っこい物を飲食しすぎた数時間後に、激しい腹痛に襲われるのが典型例。みぞおちから左 の腹部、肋骨のあたりから背中にかけて、突き抜けるような痛みが起こり、最初は重苦しく、次第に強まっていく。 時には膝を泡えないと耐えきれないほど激しい痛みが間断なく続き、嘔吐や発熱を伴う場合が多い。

これらの症状が出たち、早めに受診し、激しい腹痛が持続する場合は救急車を呼ぶなどして対応してほしい。

病院では、血液や尿検査、超音波検査、CT(コンピューター断層撮影装置)検査などで膵臓の状態や炎症の広がり を調べ、急性膵炎と診断されたら、緊急入院となる。膵臓を働かせないことが重要なため、飲食を断ち、生理食塩 水や膵炎を抑える薬などを点滴する。

軽症の場合は約3〜4日の絶食絶飲後、少しずつ流動食に切り替え、症状が安定していれば7〜10日程度で退 院できるだろう。一方、重症の場合は厚生労働省で難病指定されているほど重篤で、悪化すれば約10%の確率で 死に至ることもある。集中治療室で呼吸器や循環器、腎臓など全身の管理を行い、2〜3カ月の入院が必要となる。

急性膵炎は、原因が明確なだけに、予防できる病気だ。1日にビールなら1本、日本酒なら1合まで、週2日は 飲酒を休む程度のスタンスを続けてほしい。はしごして飲んだり、朝まで飲食することなどを続けると膵臓が悲鳴 を上げる。週2日は休肝日ならぬ“休膵日”という意識を持ち、暴飲暴食を続けることを控えることが大切だ。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/10/13号、白鳥 敬子=東京女子医科大学(東京都新宿区)消化器内科教授]

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