【和菓子でダイエツト】
作家で食通の小島政二郎は戦前、東京一と言われた和菓子屋について書い
ている。当時、その店の和菓子を食べるのは大変だった。一度は注文に出か
け、2〜3日後にもう一度出かけてやっと食べられる。「タクシーのない頃、
電車に揺られて大の男が、それこそ鴎外先生の『そめちがへ』ではないが、『二
度の迎へにただ行き帰り』しなければならないのだった」。
すぐに売ってくれないので、我慢できない者は和菓子の餡だけ分けてもら
い、待ち切れずに往来で立ったまま食ベた。しかも、その餡ときたら少しも
甘くないのだ。小島は言う。「甘いばかりが菓子の能ではない。本当をいう
と、甘くないのが菓子のネライでなければならない」。
今の和菓子は随分甘くなったが、それでもケーキなどと比べると太りにく
い。肥満の原因は、体にたまる体脂肪。食物から取った脂肪はまず脂肪酸とグ
リセリンに分解され、脂肪酸が脂肪細胞に取り込まれ、再びグリセリンと結
合して体脂肪となる。脂肪細胞中のグリセリンは、摂取された糖質から作ら
れたもの。体脂肪を作るには、糖質と脂肪という2つの栄養素がなければな
らないのだ。
もちろん、糖質の取り過ぎは肥満になるが、糖質と脂肪という2つの栄養
素を取ればさらに太りやすくなる。その意味で、糖質と脂肪を含んだケーキ
の方が和菓子より太りやすいのだ。
小豆から作られる餡には食物繊維が多く、糖質の吸収を遅らせる働きもあ
る。適度に甘みを楽しむ程度なら、肥満につながらないのが和菓子である。
[出典:日経ビジネス、2008/09/22号、堀田 宗路=医学ジャーナリスト]
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