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【睡眠不足は生活習慣病を招く】

残業や接待が続いて、帰宅が深夜に及ぶことも多い 管理職のAさん(53歳)。
会社の健康診断では、メタボ予備軍と指摘された。

メタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に代表される生活 習慣病の撃退は、今やビジネスバーソンにとって大きなテーマとなってい る。これまで、食事の量や栄養のバランス、運動不足、飲酒や喫煙の習慣が、 生活習慣病の原因として重視されてきた。これに加えて最近では、短時間睡 眠がその発症に密接な関わりを持っていることが分かってきた。

1960年代後半から、睡眠が短すぎても長すぎても、体にとっては負荷が かかり、死亡リスクが高まることが知られてきた。2003年には睡眠時間と 虚血性心疾患の発症との閏にも、有意な関連性があると報告されている。ま た、肥満、高血圧症、糖尿病などと睡眠時間との関わりを指摘する報告も、 欧米では多数見られる。

ところが、日本人を対象とした睡眠時間と生活習慣病とのリスクの関連 は、これまで十分な検討がされていなかった。都市化に伴い、日本人の睡眠 時間が減少傾向にある中、睡眠と疾病との関係への注目度が高まっている。

我々の研究グループでは、日本人の睡眠時間と虚血性心疾患因子、特に動 脈硬化性脂質代謝異常症との関連性を明らかにするよう、1999年から2006 年まで、国内で大規模疫学調査を実施した。

地方公務員の男性2万1700人の健康診断データを追跡。当初、肥満の基 準を満たさなかった1万1400人について、7年後の肥満の発症率と睡眠時 間との関連性を調査、分析した。

その結果、調査当初の睡眠時間が5時間以上だったグループに比べて、5 時間未満だったグループは、肥満リスクが1.36倍になった。7年間で睡眠時 間が5時間に減ったグループでも、1.33倍となった。最終的には、短時 間睡眠が肥満や高血糖、脂質代謝異常の高トリグリセライド血症の危険因子 となること、また、肥満が短時間睡眠の危険因子となることが示された。

また、地域を限定した男女約1100人、全国の男女約4000人の調査デー タも加えて解析を行った。地域調査データによる研究では、睡眠時間が6時 間未満と8時間以上の人では、糖尿病の指標となるHbA1c(グリコヘモグ ロビン)の数値に大差が見られた。

全国調査データによる研究からは、短時間及び長時間睡眠の人の場合は、 血清トリグリセライド(中性脂肪)値が高かったこと、いわゆる善玉コレス テロールのHDLコレステロール値は低かったことが分かった。

適した睡眠時間は個人によって異なるものの、総じて睡眠不足は、健康に 何らかの問題を起こす可能性が高いと言える。

最近、中間管理職に鬱病が増えているが、これも十分な睡眠時間が取れて いないことが一因とされている。睡眠の重要性を認識し、6〜7時間の睡眠 を確保する努力が必要だ。
(談話まとめ:杉元順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/09/15号、兼板 佳孝=日本大学医学部(東京都板構区) 社会医学系公衆衛生学分野准教授]

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