【血糖値測定は食後にも】

糖尿病で自宅近くの内科に通院しているAさん(54歳)。
医師から食事の2時間後に血糖値を測定するよう勧められた。
空腹時でなくていいのだろうか。

糖尿病はその予備軍も含めると、今や成人の5〜6人に1人が 発症痘していると言われている。

糖尿病の治療では、空腹時血糖値や数カ月間の血糖変動を示すHbA1c(グ リコヘモグロビン)といった指標を基に、食事や運動、薬物療法が行われて いる。

だが最近、食事の後の血糖値も測定しようという動きが糖尿病を専門にし た医師の間で見られる。食後の血糖値の急激な上昇が、動脈硬化の引き金と なって狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患になるリスクを高めることが分か ってきたからだ。

特に日本人の初期の糖尿病患者は、食後に高血糖を示すのが特徴であり、 血糖値は食後1〜2時間後にピークに達し、その後低下する。

昨年秋には、食後2時間の血糖値は140mg/デシリットル(dL)未満とい う国際的な治療の目標値が発表された。これは、健康な人の血糖値は空腹 時で110mg/dL未満、食事の2時間後では140mg/dL未満に収まっている との考えからだ。

また、食後高血糖は、糖尿病の早期発見の面からも重要だ。通常、体内で 糖の代謝が乱れてくると、空腹時血糖よりもまず、食後血糖が高い値を示す ようになる。心血管疾患の予防の面から言えば、空腹時血糖値が上がってく るのを待っていたのでは遅いというわけだ。

なお、糖尿病の治療では、網膜症や腎症、神経障害といった合併症を防ぐ ためにHbA1c6.5%未満といった厳しい管理目標があるが、これを達成す るためには空腹時血糖だけではなく、食後の血糖値のコントロールが不可欠 であることを示したデータが出てきている。

一方、食後の高血糖をターゲットにした様々な薬剤も登場しており、患者 の病態に合わせた治療が行われるようになった。 血糖値の測定には、血糖自己測定器を使う。手のひらに乗るサイズで、医 療機関が患者に貸し出していることもあれば、薬局やインターネットなどで 患者自身が購入することもできる。

急激な血糖値上昇を防ぐためには、食事の内容にも気を配りたい。最近注 目されているのは、GI(グリセミック指数)という考え方だ。

GI値はブドウ糖を摂取した後の血糖値の上昇率を基準に、食品ごとの血 糖上昇率をパーセントで表したものだ。GI値が高いほど食後の血糖値が 上がりやすく、低いほど上がりにくい。例えば、白米よりも玄米、精白粉より も全粒粉で作った食パンの方がGI値が低く、血糖値の上昇が抑えられる。

GI値が低い食品を選ぶほかに、食事の始めには野菜を食べる、咀嚼の回 数を多くするといった工夫も血糖値の上昇を抑えるので、併せて行うとよい だろう。
(談話まとめ:和田 紀子=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2008/09/01号、森 豊=東京慈悪会医科大学附属第三病院 (東京都狛江市)糖尿病・代謝・、内分泌内科准教授]

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