【沖田総司と唐辛子】
新撰組の沖田総司と唐辛子には意外な縁がある。1863年、江戸・小石川の
伝通院のそばにあった処静院で、幕末の治安維持を目的に「浪士隊」が結成
された。これが後の新撰組。結成大会には近藤勇、土方歳三、沖田ら総勢
200人を超える浪士たちが集まった。
伝通院の門の近くには、唐辛子地蔵と呼ばれる、珍しい地蔵尊が祀られて
いる。この地蔵は、唐辛子を供えると咳を止める御利益があることで有名
だ。その日、沖田は傍らにある唐辛子地蔵を見て、懐かしい思いに駆られた
に違いない。幼少の頃、沖田は日野で姉ミツと暮らした。その時、日野の欣
浄寺にも唐辛子地蔵があり、よくお参りをしていた。この地蔵は、唐辛子を
供えると日の病気が治るという。
唐辛子が信仰の対象とされてきたのは、食物の中でもとりわけ薬効が強い
ためだ。実際、唐辛子の辛み成分であるカプサイシンに様々な薬効があるこ
とが今では確かめられている。血行促進、殺菌作用、抗炎症作用、ダイエツト、
それに塩分の接収量を制限して、血圧を下げる作用まである。
ネズミを2群に分け、一方の群には普通の餌、もう一方の群にはカプサイ
シンを混ぜた餌を与えると、カプサイシンを与えたネズミは濃い塩水より薄
い塩水を好み、塩分の摂取量が減ることが分かった。
昔から肩凝りがひどい時には、唐辛子を1つ、肩の凝っている部分に当て
た。冷えたり足が疲れる時には、唐辛子を足の土踏まずに留めた。唐辛子の
カプサイシンの作用を考えると、理にかなった方法である。
[出典:日経ビジネス、2008/08/25号、堀田 宗路=医学ジャーナリスト]
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