【『サバの味噌煮で夏バテ知らず』】
「土用の亜の日にウナギを食べると、夏の著さに負けない」という言い伝え
は、すっかり定着した感がある。最初にこの食習慣を提唱したのは、江戸時
代の科学者、平賀源内とされている。
ウナギは脂質が豊富な高カロリー食品。さらにビタミンA、B1、Eなども
多く、スタミナ切れに陥りやすい夏には、うってつけの一品と言える。だが、
庶民の懐具合を考えれば、夏バテを防ぐためにお薦めの魚は、サバである。
サバには、コレステロールの増加を防ぐ多価不飽和脂肪酸のEPA(エイコ
サペンタエン酸)が多く含まれ、さらに女性の美容にも関係が深いビタミン
B2やビタミンA、B1も豊富なのだ。
あのサバのうまみは、マアジの3倍も多く含まれているヒスチジンという
成分によるものだが、時間が経つとヒスタミンに変化して、じんましんなど
を起こしやすい。「サバの生き腐れ」と言われるように、鮮度が落ちるのが早
いから、できるだけ早く食べるのが調理法のコツということになる。
福井県では、昔から7月2日の「半夏生」の日に、サバを家族で1人1匹ず
つ食べる習慣があるそうだ。また、魚の取れなかった京都では、若狭と京都
を結ぶ「鯖街道」を通って運び込まれる新鮮なサバを、公家も町民も首を長
くして待っていたことだろう。
さて、このサバだが、この時期はショウガを薬味に添えた味噌煮で食べた
い。サバの味噌煮とショウガの相性は抜群で、味がぐんと良くなるうえに、
ショウガには胃液の分泌を促す働きと発汗作用がある。夏の著さで新陳代謝
の鈍った体には、まさに理想的な料理なのである。
[出典:日経ビジネス、20008/08/04号、志賀 貢=医学博士]
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