【病理診断科で納得ある治療を】

会社の健康診断でガンが発見されたGさん(53歳)。
主治医の事務的な説明と流れ作業的な治療に納得できず、 詳しい説明が開きたいのだが。

2008年4月1日から、病理医のいる病院で病理診断科の看板を掲げること( 標横)が厚生労働省から認可された。これにより、今まで裏方 に回っていた病理医が、外来に出て患者と直凄対話することが可能となる。

病理医は、患者から採取した組織や細胞の標本を顕微鏡で観察し、どんな 病気か診断をする専門家。胃炎の胃粘膜にいるピロリ菌を指摘したり、組織 を見て肝炎の進行度を判断するなど、全身の病気を扱う。

中でも一番多いのが、ガンの病理診断だ。例えば、喫煙者の扁平上皮ガン は気管支近くの肺の根元にできやすいが、レントゲン写真では分からない初 期の場合、病理医による痰の細胞診で発見されることがある。肺ガンの治療 は手術が基本となるものの、肺の末梢にできる腺ガンでは広く開胸しないで 摘出可能な場合があるほか、小細胞ガンなら手術より化学療法が有効だ。

このように、ガンのタイプや広がり具合を病理医が判断して、治療方針も 決まる。病理診断はそれほど重要なものなのだ。しかし、病理検査の説明は 臨床医(主治医)が担当し、病理医は表に出ない。臨床医は、病名や進行具合だけを事務的に話して、患者は納得 しないまま治療が進むことも多い。

一方、自分の病気を診断した病理医に直接話が開ければ、これほど心強い ことはない。顕微鏡の画像モニターで自分の病変部分を確認し、正常な細胞 と比較しながら、病気に侵された細胞を見て進行具合や悪性度、診断理由な どを説明されれば、病気への理解が深まり、その後の治療へと気持ちを切り 替えられる。または手術後に、体から切り取られた腫瘍組織の顕微鏡画像を 見て、結果に納得もできるだろう。臨床医も、患者や家族の理解が増し、治 療への協力を得るのに役立つはずだ。

だが、病理医のいる病院が、こぞって病理診断科を標榜するわけではな い。現在日本では、組織と細胞を合わせて年間2800万件の病理検査が行わ れている。これほど大量の検査を担う病理医は日本で1989人、病理医のい る病院は660軒しかなく、300床以上の大規模な病院でも常勤で1人いる程 度。病理医のいない病院は、民間の衛生検査所に委託して病理診断を行って いる。病院に常駐する病理医は、細胞や組織の診断から病理解剖、臨床研修 医の指導まで1人で担当するため、外来で患者と話をする時間を作るのは難 しい。実際、病理診断科を標榜している病院は全国でもごくわずかだ。

しかし、患者の要望も高まっており、標榜はしなくても、病理外来やセカン ドオピニオン(別の医師の意見)外来で病理医が対応する病院もある。病理 医との対話で、治療の満足度が上がることは間違いない。納得のいく医療を 受けたいなら、病理医のいる病院を探すことも選択肢の1つとして、考えて みてはいかがだろう。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、20008/08/04号、田村 浩一=東京逓信病院(東京都千代田区) 病理科部長]

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