【脳梗塞予防に脳血管内治療】

脳梗塞で倒れたWさん(58歳)。幸い、後遺症もほとんどなく 元の仕事に復帰できたが、頚動脈の狭窄から、再発予防に 脳血管内治療を勧められた。

脳血管内治療とは、大腿のつけ根などから血管にカテーテルを入 れて器具を操作し、血管内の病変を治す治療法である。皮膚や頭蓋を切開す る手術lこ比べ、体への負担が少ないことが特徴の1つだと言える。

脳血管内治療には、くも膜下出血の主な原因となる動脈瘤や脳動静脈奇形 をコイルで閉塞する塞栓術、頭蓋内血管や頚動脈の狭窄症を治療するステン ト留置術がある。心筋梗塞の既往があるWきんは、体への負担の少ないステ ント留置術を勧められたのであろう。

頚動脈の血管が動脈硬化のために狭くなる頚動脈狭窄症は、脳梗塞の原因 にもなる病気である。治療には、抗血小板薬を内服する内科的治療が行われ るが、狭窄の度合いが激しく脳梗塞を起こす危険性が高い場合は、外科的治 療を検討する。欧米では、70%以上の狭窄だと脳梗塞の再発率は2年間で約 26%、外科的治療を行った場合は9%で済むという臨床結果がある。

頚動脈狭窄症の外科的治療と言えば、まず内膜剥離術が挙げられる。狭 窄した血管を広げて血流を改善するため、血管内壁についたアテローム(コ レステロールや脂肪)を削り取る。首を切開するため声帯や嚥下機能に影響 が出ることもあり、高齢者には体力的負担も大きい。また、心臓病を合併し ている患者さんでは、心筋梗塞を起こす危険性もあり、年齢や病状によって は手術を行えないこともある。

そのような患者さん向けに考案されたのが、頚動脈ステント留置術である。 内膜剥離術を行うには危険が伴う患者さんを対象にした欧米の臨床試験で は、内膜剥離術と同等かそれ以上の有効性が確認されている。

ステント留置術は日本でも1990年代から徐々に行われるようになり、最 近では、内膜剥離術より手術数が多くなってきた。この春には厚生労働省か ら正式に認可を受けた。

ステント留置術を受ける際には、2種類の抗血小板薬を1週間前から服用 する。手術時には、血液が固まりにくくなる薬を血液に注入。大腿のつけ根 からカテーテルを入れて頚動脈まで進め、風船で狭窄部の血管を広げ、筒状 のステントを置く。ステントの先には100マイクロメートル(マイクロは 100万分の1)の穴が開いたフィルターがついており、血流を遮断せずに、 剥がれたアテロームだけをキャッチ。フィルターは最後に回収する。

手術自体は1時間種度。病院によって違うが、局所麻酔だけで行うことも 多い。入院期間は4〜5日程度で済む。

最近、動脈硬化のリスクの高い人が増えている。高リスクを自覚している 人には、頚動脈の超音波検査をお勧めする。狭窄があった場合は、できるだ け早く専門医に相談を。なお、ステント留置衝を実施できる医療機関は限ら れている。希望する場合は、手術実績などを調べて受診するのが望ましい。
(談話まとめ:仲尾匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/07/28号、上野 俊昭=帝京大学医学部附属病院(東京都板横区) 脳神経外科准教授]

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