【虫が這うような足の不快感】

夜になると、足に虫が逼うような「むずむず感」を覚え、 動き回りたくなるBさん(54歳)。
近所の病院で診てもらったが、原因が分からず因っている。

夜間、足に虫が這いずり回るような不快感が生じるのは、「むず むず脚症候群」の特徴的な症状だ。

むずむず脚症候群は、「下肢静止不能症候群(RestlessLegsSyndrome =RI5)」とも呼ばれる。軽症のうちは何となく足に不快感がある、むずむず する、ちりちりする、火照るといった程度だが、重症になるとじっとしてい られず、動き回りたくなるほどの不快感が生じる。

症状は夕方から夜にかけて起こることが多いため、患者はなかなか寝つけ なかったり、睡眠中に目覚めてしまうなどの睡眠障害に悩まされることにな る。その結果、日中に耐え難い眠気を催したり、不安や抑うつなどの症状を 起こすこともあり、QOL(生活の質)は著しく低下する。

この病気は、17世紀には既にあったと言われ、名称は1945年にスウェ ーデンの神経科医が命名した。欧米での有病率は5〜10%と高い。加齢とと もに増加し、ピークは60〜70代と言われている。

日本では200万〜500万人の潜在患者がいると推測されている一方で、 一般の人はもちろん、医師の間での認知度もまだ極めて低いことから、原因が なかなか分からず、Bさんのように悩み続ける人も多い。

むずむず脚症候群に関する研究は、この10年ほどで進展してきた。はっ きりとした原因自体は解明されていないものの、中枢神経系のドーパミン機 能障害と鉄代謝異常、遺伝的要因などが関わっていると考えられている。

最近では、診断基準や治療のガイドラインが定められた。以下の4つすべ ての項目を満たした場合に、むずむず脚症候群と診断が確定される。

@下肢の不快感、異常感覚に伴って、下肢を動かしたいという強い欲求が起 きる(上肢やほかの部位が加わることもある)、
A横になる、座るなど安静時でも症状が生じ、増悪もする、
B運動など体を動かすと症状は改善、または治まる、
C日中よりも夕方から夜に起こったり、増悪する。

治療には、ドーパミン神経機能を向上する薬剤などが用いられる。現在、 より治療効果の高い薬が認可申請中で、来年末には使用できるようになる 見込みだ。なお、カフェインやアルコール、ニコチンの摂取は、症状の増悪 の要因となるので、コーヒーなどの飲料や飲酒、喫煙は控えた方がいい。

むずむず脚症候群は、静脈疾患、経筋病、鬱病、糖尿病性ニューロバシー などの疾患と聞違えて診断されやすい。そのため、むずむず脚症候群が疑 われる場合は、日本睡眠学会(http://jssr.jp/)の認定医か、精神・神経内科 の専門医を訪ねてほしい。また、今年6月には、患者会「むずむず脚症候群 友の会」(TEL:072−646−6226、祝日を除く火・木・土曜日の午前10時〜午 後4時受け付け)も結成されている。
(談話まとめ:杉元順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/07/14号、井上雄一=財団法人神経研究所附属 代々木睡眠クリニック(東京都渋谷区)院長]

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