【『0.8で健康に』】

我々の体の生理は、「0.8」という数字と縁が深い。例えば、心臓の鼓動は、 約0.8妙に1回打っている。さらにこの数値は、味覚にも深い関係があるこ とが分かっている。

実は、日本料理には欠かせない吸い物を、最もおいしいと感じる塩分濃度 が0.8%なのである。一流の料理人は、この塩分温度の吸い物を、さじ加減1 つで作るというから、さすがである。

さて、この塩分だが、生活習慣病を予防するためには、その摂取の仕方に 注意が必要だ。米国で1970年代に調査されたドール博士の報告によると、 ハワイ在住の日系1世は、本土に住む同世代の日本人に比べて、胃ガンの発 生率が30%低かった。逆に、大腸ガンは50%も高かった。その原因を博士 は、ハワイに住むようになってからの塩分摂取量の減少と、脂肪分の過剰摂 取にある、と分析している。どうやら、塩分摂取料は少ない方が、胃ガンの予 防には有効のようである。

戦国時代、織田信長が京の都へ上洛した折、料理人として召し抱えた京料 理の達人の作る料理が、あまりの薄味なのに腹を立て、「こんな味気ない料 理では、武士は力が出ない」と言って、成敗を命じたという話がある。しかし これでは、信長自身、本能寺で一命を落とさなくとも、晩年、生活習慣病で 悩まされたかもしれない。

余分な塩分の排出を促すカリウムの多い野菜をよく食べる日本人の食生活 では、ミネラルのバランスを取るうえで、1日10g程度の食塩摂取が必要だ。 だが、くれぐれも塩分濃度は0.8%の薄味を守るようにしたいものだ。

[出典:日経ビジネス、2008/07/07号、志賀 貫=医学博士]

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