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【夏みかんのデトックス】

1876(明治9)年、不平士族が明治政府に敵対して萩の乱を起ヒした。この 年、旧萩藩士の小幡高政は、窮乏に苦しむ士族を救済するため、夏みかんの 栽培に取り組み始めた。

  「夏みかんで何ができるというのか!」。小幡が自宅に500本の夏みか んを植えた時、多くの人があざ笑った。それでも小幡は黙々と栽培を続け、78 年には1万本の苗木を用意し、士族たちに分け与えた。当時、萩には荒れ果 てた武家屋敷が多く、その一角で夏みかんが栽培され、町中が苗木で埋め尽 くされた。萩の町は巨大な果樹園となり、昭和初期まで全国一の生産高を誇 り、大きな収入を人々にもたらした。

  夏みかんは強い酸味だけではなく、苦みもあるのが特徴だ。この苦みを嫌 う人もいるが、これがあるからこそ、夏みかん特有の風味を醸し出す。それ ともう1つ。夏みかんには苦みの成分としてリモノイドが多く含まれてい る。この物質に有害物質を体外に出す、いわゆるデトックスの作用がある。

アゾキシメタンという化学物質をネズミに投与するとほは100%の確率で 大腸ガンが発生するが、一緒にリモノイドを食べさせると、発生率は50% まで下がる。リモノイドは、グルタチオンSトランスフエラーゼという酵素 の働きを活性化させて、有害物質を体外に排出してしまうのだ。

現代では、至る所に有害物質がある。残留農薬、排出ガス、ダイオキシン、 様々な環境ホルモン…。苦みと酸味の強い夏みかんは、これらの有害物質 から体を守ってくれる、深い味わいを秘めているのである。

[出典:日経ビジネス、2008/06/23号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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