【高血糖、たんばく尿は早期治療を】

健診で高血糖とたんばく尿を指摘されたKさん(53歳)。
保健指導で医療機関への受診を勧められたが、忙しくて行きそびれている。

会社の健康診断で血糖値が高めだったり、尿検査でたんばく尿が 「+(プラス1)」、もしくは「++(プラス2)」だった人はいないだろうか。こ れらが当てはまる人は、腎臓の機能が低下している可能性がある。

血糖値の高い状態が続いたり、糖尿病がうまくコントロールされていない と、体の各部分に不調を来すようになる。中でも有名なのが、神経障害や網 膜症、腎症で、これらは糖尿病の3大合餅症と言われている。

腎臓は、血液中の老廃物や水分をこして、血液をきれいにする働きをして いるが、高血糖の状態が続くと、腎臓が侵されてたんばく尿が出るようにな り、体がむくんだりするようになる。これが糖尿病性腎症である。

腎症が悪化すると、最終的には透析なしでは生きられない状態になる。近 年、糖尿病の劇的な増加を受けて、糖尿病が原因で腎症になり、透析を受け る患者の増加が問題になっている。

血液透析になると、患者は過3回専門の医療機関を受診し、1回4〜5時 間の透析治療を受けなければならない。働き盛りの年齢では、この時間を 確保するのが大変な負担で、今まで通りの仕事を続けるのが難しいケースも 少なくない。このような患者さんの苦労を目の当たりにして、私はいつも、 もう少し早く治療を開始できていたら−と非常に残念に思うのである。

糖尿病性腎症は、ほかの合餅症と同じように、症状がかなり進行するまで自覚症状がない。だが、糖尿病は発症 初期から、着々と体を蝕んでいる。そのため、気づかぬうちに症状が進み、 医療機関にかかった時には、既に透析が近いという場合も多いのが現状だ。

ただ、腎症の患者では、尿中にアルブミンやたんばくが出るため、これら を指標として腎臓の状態を調べることができる。腎症が進んだ患者では、た んばく尿が陽性となる。また、たんばく尿が陰性でも、尿中のアルブミンと いうたんばく質を測定することで、より早期に腎痘を診断できるようになっ ている。

私の病院では、糖尿病の患者さんは、たんばく尿が陰性でも尿中のアルブミ ン検査を、半年に1回は行うようにしている。そして、尿検査と同時に、血 液検査でクレアチニンを測定して、腎機能の評価をしている。

糖尿病性腎症の治療は、血糖のコントロールと血圧の管理が非常に重要 だ。最近では、血糖コントロールのための様々な薬剤や、腎臓を保護する効 果がある降庄薬が発売され、糖尿病性腎症は、早い段階から治療すれば治せ る疾患になっている。

治療は早く始めるほど効果があるので、できるだけ早く受診するのが望ま しい。健康診断の結果が要検査なら、自覚症状がなくても、医療機関で糖尿 病の治療と合併症の検査を受けるようにしてほしい。
(談話まとめ:富田文=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2008/06/23号、槇野博史=岡山大学(岡山市)大学院 医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学教授]

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