【梅雨時が危ない熱中症】

梅雨の合間の晴れた日、事務職のTさん(40歳)は、 外出先でめまいに襲われた。
暑さに慣れていない体には、急な温度変化は過酷だ。

私たちの体は体温が上昇すると、皮膚の血管が拡張して血流量が 増え、血液の熱を皮膚から放出したり、発汗することで体温を下げている。し かし、高温多湿の環境や高温下での運動や労働が続くと、皮膚から熱を放出 しきれなくなることがある。そのため体温調節がうまくいかなくなり、体調 不良を起こすのが熱中症だ。

夏真っ盛りの猛暑が続く時期に多いと思われがちだが、梅雨の合間の突然 気温が上昇した日や、梅雨明けの蒸し暑い日の方が、熱中症の事故は多発し ている。暑い環境での体温調節機能は、暑さへの慣れと関連が深いからだ。

クーラーの利いたオフィスからの外出、涼しい土地から暑い土地への出張 などは注意する必要があるし、疲労感がある、持久カが弱い、肥満や糖尿病 など持病のある人はかかりやすい傾向にあるので、用心した方がいい。

熱中症の症状には段階がある。めまい、吐き気、頭痛から始まることが多 く、それが進むと、立っていられなくなったり、嘔吐することもある。意識 障害、全身のけいれん、うわ言を言うなどの最終段階になると、救急車を呼 ぶほどの緊急を要する状態となる。

初期症状を感じたら、ネクタイやズボンのベルトを凄め、涼しい場所で休 みながら水分を補給すれば、30分から1時間ほどで大抵は回復する。それ 以上かかっても気分が優れない場合は、脱水が回復していないか、ほかの 病気の可能性もあるので、受診した方がいい。

熱中症はある程度知られているのに、毎年数千人がかかっており、その 数が減少している印象は少ない。水分補給が大事と頭では分かっていても、 多くの人が正しく実行できていないことが理由の1つだろう。

のどが乾くということは、既に脱水に陥っている状態なので、そうなる前 に水分を取るのが基本だ。外出前はコップ1杯の水かお茶を飲んで、体を潤 してから出かけてほしい。さらに、15〜30分ごとに50〜100ccほど、時間 を決めてこまめに飲むことも重要だ。また、発汗すると、水分と同時に塩分 も奪われるので、時々スポーツドリンクを飲んだり、せんべいや梅干しなど を食べて塩分補給も心がけたい。

アルコールは利尿作用があるため、水分補給には適していない。接待ゴル フなどで運動中にアルコールを飲んだ場合は、スポーツドリンクや水などの 補給を忘れないこと。

熱中症では、めまいを起こしてから2〜3時間で倒れることも珍しくない。 救急車で運ばれるほど重症になると死に至る確率も高く、実際に毎年200 〜300人の死亡事故が発生している。軽く見て放っておくと、症状の進行が 早く、その日のうちに死に至る可能性もあるのが、熱中症の本当の怖さだ。 外出の際は水を携帯するなど、定期的な水分補給を習慣づけてほしい。
(談話まとめ:内藤綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/06/16号、小松 裕=国立スポーツ科学センター(東京都北区) スポーツ医学研究部副主任研究員]

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