【『初夏の食卓に「狭間のメジ」』】
地球温暖化の影響は、家庭の食卓にもじわじわと忍び寄っている。例えば、
今までは熱帯地方で多発することで知られていた「シガテラ中毒」が、日本
国内でも発生するようになった。
この食中毒の原因物質は、海藻に付着するプランクトンの一種「ガンビエ
ールデイスカス・トキシカス」が作る「シガトキシン」など複数の毒で、食物連
鎖によって魚に蓄積し、その魚を食べることで感染する。発病すると水など
冷たいものに触れた時、感電したように感じる神経症状に悩まされる。しか
も、カマスなど数多くの釣り魚から発症するからやっかいだ。
食中毒は一般的に、晩夏から初秋にかけて多発するが、近年のように気
候に変調が見られるようになると、通年で注意が必要である。
魚といえば、食卓の王者と呼ばれるのがマグロ。クロ(ホン)マグロ、ミナ
ミ(インド)マグロ、メバチマグロといったマグロには、それぞれ旬の時期
がある。その中で、1年を通して味が変わらないとされるのが、ホンマグロ
の幼魚「メジマグロ」だ。「狭間のメジ」と呼ばれるのは、ほかのマグロのオフ
シーズンを穴埋めしても、余りある味のよいマグロという意味である。
マグロには筋肉の運動に欠かせないミオグロビンや、血栓予防に有効に働
くEPA(エイコサペンタエン酸)が多く、“血液サラサ”効果は魚介類の中
でもトップクラス。特に、ホンマグロのトロは、サバ、養殖ハマチ、養殖マ
ダイと並んで、生活習慣病が気になり出したら、意識的に摂取したい食品の
1つだ。もちろん、食中毒には十分な注意を。
[出典:日経ビジネス、2008/06/08号、志賀貫=医学博士]
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