【肺の健康状態が分かる「肺年齢」】

長年の喫煙習慣が抜けないAさん(58歳)。健診の]線検査では 異常が見つからないため、「自分に喫煙の影響はない」と 豪語している。

肺は、呼吸によって常に外気と接しているため、たばこなど外部 の有害物質の影響を受けやすい。それらの影響が蓄積すると、階段を上ると 息が切れる、痰が絡むなどの症状が表れるようになる。

Aさんのように、会社の健康診断で肺の]線検査を受けても異常が認めら れないと、そうした症状が表れても、加齢によるものと早合点しがちだ。だ が、]線検査で分かるのは、肺ガンや結核など、肺の形などが変形する呼吸 器の形態の異常のみ。機能の異常は調べることができないのだ。

肺の機能は「スパイロメトリー」と呼ばれる専門の機器を利用して検査す る。これにより、「息が切れる」「咳が出る」といった症状から、COPD(慢 性閉塞性肺疾患)や喘息、問質性肺炎といった疾患の正しい診断や病状の評 価が可能になる。

だが、スパイロメトリーの認知度が高くないため、例えば現在、COPDと 診断されている患者数は、推計数の10分の1。さらに治療まで受けている のはその半分にすぎない。喘息についても過少評価されているし、同質性肺 炎も見逃されていると考えられる。

もっとも、スパイロメトリーを利用した「1秒率」「1秒量」という考え方は 患者だけではなく、医療関係者にも分かりにくいものだったのも確かだ。そ のため、日本呼吸器学会は新たに「肺年齢」という考え方を提唱することに した。これはこれまでと同様スパイロメトリーを使う検査だが、健康な人の 年齢と身長、肺活量から「あるべき年齢」を算出したものだ。

1秒間に吐ける空気の量は18歳を超えると、健康な人でも男性で28cc、 女性で22ccずつ、毎年低下していく。さらに、呼吸器の病気の時はもちろん のこと、喫煙でも低下する。たばこを吸っているだけで5歳、軽症のCOPD で7〜10歳、肺年齢が高くなるというデータもある。自分が健康だと思って いても、肺の機能は明らかに低下しているというわけだ。

また、肺年齢が10歳高くなると病気になるリスクも高まる。COPDの場 合、男性で2倍、女性では2.4倍高くなる。喫煙と密凍な関係があるとされ るCOPDだけではなく、同質性肺炎などでも肺年齢は上昇する。

肺年齢は禁煙や治療によって若返ることも可能だ。治療効果の出やすい軽 度の肺年齢上昇の場合はもちろんのこと、肺年齢が実年齢よりも20歳以上 上回り、日常生活に支障を来すような重症のCOPDの場合も、治療や日頃 の心がけにより6〜7歳若返る。

いずれにしても、呼吸器の疾患は早期に発見して治療を開始することで、 より良い効果が得られる。ぜひ肺年齢に興味を持って、咳や痍が出る場合に は医療機関を受診し、「肺年齢を測定してほしい」と申し出てほしい。
(談話まとめ:山崎大作=日経ドラッグインフォメーション)

[出典:日経ビジネス、2008/05/26号、相澤久道=久留米大学(福岡県久留米市〉医学部 内科学講座 呼吸器・神経・膠原病内科 主任教授]

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