【ゲップが多発する呑気症】

転属したHさん(45歳)は、打ち合わせでゲップが連発し、 不快でたまらなかった。
ゲップは普通の生理現象と放ったままでいるのだが…。

緊張した時、「固唾をのむ」という言葉があるが、文字通り、人は 不安や緊張があると、無意識に唾液をのみ込むことがある。それを頻繁に繰 り返すことで、胃に唾液とともにのみ込んだ空気がたまり、ゲップやおなら の多発、お腹の張り、胃の膨満感などの症状が現れるのが「呑気症」(どんき)だ。

緊張しやすい人、うつ傾向の人などがなりやすく、転職や転属をしたり、 大きな仕事を任されたり、人間関係がうまくいかないといった大きなストレ スがかかることで、無意識に唾液とともに空気をのみ込む量が増え、発症の きっかけになるケースが少なくない。

通常、人がのむ空気の量は1回3〜5ccで、胃にある空気は50ccくらい までが正常だが、呑気症になると、300〜400ccの空気が胃にたまること がある。その空気で胃が通常の3〜4倍に膨らみ、心臓を圧迫して動悸や心 臓の痛みを引き起こす場合もある。

また、誰でも緊張すると歯を噛みしめる傾向にあるので、その時舌が上あ ごに押し当てられ、のどの奥に唾液と空気がたまり、それをのみ込むことを 繰り返して呑気症になる人もいる。肩・首の凝りや痛み、頭痛、腕のしび れ、目の奥の痛み、疲れ目、耳鳴りな どが同時に出たら、噛みしめが引き起 こす「噛みしめ呑気症候群」の可能性 もあるだろう。

呑気症は、予備軍も含めると8人に1人と意外に多い。しかし大抵の人は、、 ゲップやおならなんて毎日出ているものだから、多少回数が多くても気にし ない。そこで呑気症の診断は、日常生活に支障があるかないかが大きな基準 となる。大事な会議でゲップを連発して発言しにくい、取引先との会食でお ならが止まらない、胃の膨満感が不快で仕事に集中できないなど、日常生活 がままならない状態になったら呑気症を疑い、医師に相談するといい。

呑気症は、消化器内科、消化器外科、胃腸科などが担当だが、胃や大腸の空 気を吸い取る吸着剤を投与されて終わることもある。しかし、ストレスを軽 減し、必要以上の空気ののみ込みや噛みしめを少なくする努力をしなけれ ば、薬で症状が軽くなることは少ない。噛みしめが頻発するなら、医師に相談 のうえ、噛みしめ呑気用のマウスピースを使用するといいだろう。

時々深呼吸をして、口から息を吐き終わる頃に唇を軽く結ぶクセをつけれ ば、空気ののみ込み過ぎを予防できる。早食いをしない、ガムを噛まない、、ビ ールなどの炭酸飲料はほどほどにするといった対策も有効だ。下向きの姿勢 は空気をのみ込みやすいので、デスクワークでの姿勢にも気をつけたい。

呑気症は、ストレスのバロメーターとも言える病気。ゲップとおならが異 常に増えたと思ったら、知らないうちにストレスがたまっているかもしれない。 上手にストレス対応法を見つけることが、改善の早道となるだろう。
(談話まとめ:内藤綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/05/12号、小野 繁=ペイサイドさちクリ=ツク(横浜市中区〉 院長 心療内科担当]

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