【肥満を防ぐ初ガツオ】

江戸っ子は初物好きで、滑稽本の作者である十返舎一九も、ある時、初ガ ツオが食べたくなった。初ガツオは珍しいだけに高価な魚。借金取りに追わ れている一九にはそんなカネはない。そこで、妙案を思いついた。

一九は質屋で「すぐに質草を持ってくるから、カネを貸してくれ」と頼ん だ。一九に好意を持っている主人はしぶしぶカネを貸してくれた。しばらく して、一九が祇紗包みを持って戻ってきた。「これは20両の価値がある」と 一九が言うので、主人がそれを開いてみると、何と請求書の束。「これは借 りたカネで、貸したカネではない!」。

一九が逃げ帰った後、人のいい主人は感心し始めた。「あの人は才能があ るのに、好きで貧乏して、悠然と暮らしている。人には真似のできないこと だ」。主人が家を訪ねると、借りたカネで買ったカツオを肴に、一九が飲ん でいた。主人も一緒に飲み始めると、一九は主人の扇に歌を書いた。

「借金を質に置いても初鰹 求めて食わん利も食はば食へ」

 カツオには、動脈硬化を防ぐEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ド コサへキサエン酸)が豊富だが、最近になってヒスチジンという肥満防止に 効果のあるアミノ酸も豊富に含まれていることが分かってきた。人間で確か めた研究では、たんばく質摂取量に占めるヒスチジンの割合が高い人ほど、 食事による摂取カロリーが低いことが判明。どうやらヒスチジンには、食欲 を抑える働きがあるようだ。「初物は75日寿命を延ばす」と言うが、これも あながちウソではないかもしれない。

[出典:日経ビジネス、2008/04/21号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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