【『酒を飲んだら牛になれ』】
春は人事異動による歓送迎会や花見など、何かと飲酒の機会が多くなる季
節である。「食べてすぐに横になると牛になる」という行儀作法を教える言
葉があるが、これを転用し、「酒を飲んだら牛になれ(横になれ)」とすると、
酒愛好家の健康維持に役立つ。
酒の主成分であるアルコールは、大半が肝臓で処理される。その処理を助
けるためには、実は、体を横にするのが効果的なのである。
肝臓の正常な働きを保つためには、新鮮な酵素と栄養に富んだ血液の供給
が欠かせない。さらに、十分な血液量があることも大切だ。
この肝血液量は、体が立っている状態を基準にすると、横になった時には
2倍に増える。逆に、事務仕事などの軽作業をすると半分になり、激しい運
動をするとさらにその半分にまで減少してしまう。肝臓は、それほど血流の
変動が激しい臓器なのだ。
血液中のアルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)によって、
酔いの原因となるアセトアルデヒドに分解され、最終的には炭酸ガスと水と
に分けられる。悪酔いや二日酔いで苦しまないためには、飲んだら早めに牛
になって、この過程を助けるのが一番である。また、酒量を1〜2合に控え
ることも大切だ。一升瓶を空けたと自慢し合っていては、やがて肝臓病が忍
び寄ることになる。
早く横になる効用は、体だけでなく職場の和にも役に立つ。上司がさっと
席を立って帰宅すれば、若い部下たちは大いに羽を伸ばして、明日への活力
を養える。その際上司は、多少の心づけを忘れずに。
[出典:日経ビジネス、2008/04/07号、志賀貢=医学博士]
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