【白内障の新手術法】

最近、白内障で物が見えづらくなってきたYさん(55歳)。
同じく白内障の同僚が、「プレチョップ法」による手術を 受けたと開き、興味を持っている。

白内障は目の中のレンズの役割をする「水晶体」が濁る病気だ。 濁りで光がうまく通らず乱反射し、視力の低下、目のかすみ、光をまぶしく 感じる、といった症状が現れる。

白内障は、加齢とともに誰にでも起こる疾病だ。日本の白内障患者は130 万人とも言われ、60歳以上では8剖以上の人の目に何らかの濁りがある。

この病気の治療には、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを目の 中に入れる白内障手術が行われる。現在、手術の主流となっているのは、「超音波 乳化化吸引術」と言われるものだ。最近ではこれを改変し、私が考案した 「プレチョップ法」という術式を実施する施設が増えている。

従来の超音波乳化吸引術では、まず目の表面の角膜を約3mm切開し、そ こからメスを入れて水晶体を包んでいる薄い膜に丸い穴を開ける。次に、穴 から超音波で発振しながら水晶体を砕いて吸引する器具を挿入し、濁った水 晶体を取り除く。その後、水晶体があった場所に眼内レンズを入れる。

一方、プレチョップ法では、吸引する前に専用の器具で水晶体を4〜8分 割し、小さくしておいた水晶体を超音波で破砕、吸引するのが特徴だ。

大きな塊の水晶体を砕く従来の方法と異なり、吸引の器具を目の中で何度 も大きく動かさなくてよいため、2mm以下の切開創で手術できる。傷口が小 さいため、縫わなくても自然にふさがり、炎症が少なく、傷の治りが早い。 術後に乱視になりにくいというメリットもある。

また、水晶体が小さくなっているので超音波をかける時間は、従来の2〜 3分から数秒へと短縮できる。破砕の際にかける超音波エネルギーが小さい ため、角膜などの大切な組織を傷めにくい。

さらに、白内障が進行して水晶体が硬くなっているケースでも、破砕時に 水晶体を包む膜を破損してしまうといったリスクが少ない。加えて、従来 20〜30分かかった手術時間も、数分と短くて済む。当院では、ほかに全身 の疾患がない場合には、通常日帰り手術を行っている。

手術後、1週間ほどは外出時や就寝時にゴーグルをつけてもらうほか、洗 顔や洗髪などに制限はあるものの、1カ月を過ぎればほぼ通常通りの生活が できる。

白内障手術は、急ぐ必要はない。日常生活に不自由が出てきたら手術を受 けるといいだろう。ただし、糖尿病やアトビー性皮膚炎の人、ステロイド剤 を長期間服用している人では20〜30代でも白内障が発症し、進行が速いケ ースもあるので留意が必要だ。

最近では、遠近両用の眼内レンズなどもあり、50歳以上で既に白内障が 始まっている場合には、近視や遠視、老視の矯正手段として、白内障手術を 受けるという選択肢もあるだろう。

(談話まとめ=武田京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/04/07号、赤星隆幸=三井記念病院 眼科部長]

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