【天然の糖尿病薬、体内に】

 暴飲暴食時、体内では糖尿病を抑える物質が生産されている……。送別会と歓 迎会が続く時節柄、中年に近づくメタボ気味の記者としては気になる情報だ。孫 子日く、敵を知り己を知れば百戦危うからず。まずは己の防衛機能を知ろうと、 東北大を訪ねた。(長野剛)

−不良品のインスリン生産抑えるたんぽく質−
[東北大マウスで実験成果を米誌に発表]

「これを使って調べたんです」と石原寿光講師(代謝学) が見せてくれたのが、黒っぼいネズミ(マウス)が入った水 槽。少年時代、家にいたネズミと似た、ぞうきんのようなニオ イがする。

糖尿病のマウスを調べていた石原さんは4年前、4E−BP1というたんばく質が膵臓で増 えているのを発見。「糖尿病の発症に関係あるのでは」と研究 すると、これが体内にある天然の糖尿病薬≠ナあることが突 き止められたという。結果は先月、米国の専門誌に掲載された。

糖尿病は、膵臓で作られるインスリンという物質の効果が弱まり、血液中の糖が増える病気。 糖尿病マウスで増えていた4EーBP1は、インスリンにどう影響するのか。石原さん は、4E−BP1が作れないマウスと正常なマウスで、糖尿病 の進行を比較するなどして調べた。

その結果、4E−BP1はインスリン生産を抑る物質だと 分かった。インスリン生産時にどうしても出来てしまう不良品 のインスリンは膵臓細胞を壊すことが分かっており、糖尿病の 一因と疑われている。

そこで石原さんは考えた。暴飲暴食などで血糖が増えると、 血糖を下げるためインスリンが大量生産され、同時に不良品も たくさん出来る。そんな時、4E−BP1がインスリン生産と ともに不良品生産を抑え、細胞を破壊から守るのではないか、 と。

−新薬開発なるか−
このシナリオが正しければ、糖尿病になりかかった人の4E−BP1生産を 助けることで、糖尿病進行を食い止める新治療 薬が開発出来そうだ。

そのメカニズムからするとインスリンの生産を促進して血 糖を下げる現在の一般的な治療法は果たして妥当なのかという 懸念が出てきたという。インスリンを作らせすぎると不良品も 増え、細胞が危機にさらされ、いずれはインスリンを作る細胞 自体が死んでかえって糖尿病が悪化してしまうのではないかと いうのだ。

「結局、適正な食事と運動で健康な生活をし、糖尿病を予防 することが「一番大事」と石原さん。。己の身体の防衛能力を過信 せず、敵である暴飲暴食を遠ざけるのが、療局は健康のコツと いうわけだ。全くごもっともとわかうてはいるんだが・・・。

[出典:朝日新聞、2008/04/03]

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