【ライスカレーとカレーライス】

日本人が「カレー」という“黄色い料理”を初めて知ったのは1872(明治5) 年。その年に出版された仮名垣魯文の『西洋料理通』にカレーの作り方が紹 介された。その5年後、東京の風月堂では「ライスカレー」を洋食のメニュ ーに取り入れた。当時はカレーのことをそう呼んだ。夏目漱石の『三四郎』 にもライスカレーが出てくる。

逆転して「カレーライス」と呼ばれるようになったのは、昭和に入ってか らのこと。東京の中村屋がご飯の上にカレーをかけたライスカレーと区別す るために、ライスとカレーを別の器に分けた高級カレー「純印度式カリーラ イス」を80銭で売り出したのがきっかけだった。同じ頃、カレーブームもや ってきた。阪急百貨店の食堂でカレーを20銭で売り出すと、爆発的な人気 を呼んで1日に2万5000食も売れた。

カレーが黄色いのは、ターメリックというスパイスが使われているから だ。これはウコン(ショウガ科単子葉植物)を乾燥させて粉末にしたもので、 クルクミンという黄色の色素がたくさん含まれている。今、世界中で色素の 研究が進んでいて、クルクミンが人体に有用な様々な働きを持つことが分か ってきた。その1つが、ガン予防だ。

ガンはいくつかの段階を経て、一人前のガン細胞となる。クルクミンはそ の各段階でガンの成長を抑制する。マレーシアなどではクルクミンを肌に塗 る習慣があるが、実はクルクミンには皮膚ガンを防ぐ働きがある。カレーを よく食べるインドでは、黄色は人々を害悪から守る「聖なる色」とされてい る。カレーは正真正銘の薬膳だった。

[出典:日経ビジネス、2008/03/24号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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