【夫婦で向き合う男性不妊】

結婚5年目のDさん(41歳)は、夫婦ともに健康なのだが なかなか子供に恵まれない。
デリケートな問題だけに、治療にも二の足を踏んでしまう。

現在、不妊に悩む夫婦は10組に1組と言われている。原因は、男 性のみにある場合、女性のみにある場合、両方にある場合がそれぞれ同率に なっている。

定期的に夫婦生活を持ち、2年子供ができなかったら不妊症と定義される が、晩婚化が進む現状を考えれば、1年ぐらいで妻が妊娠しなければ、不妊 の検査をお勧めする。男女ともに35歳あたりを過ぎると、生殖機能が低下 する傾向にあるからだ。

男性の受診は泌尿器科が適している。問診から姑まり、視診・触診では、 精巣の張りや固さ、副睾丸(精巣上体)の拡張の有無や精管の有無など、陰嚢 や精巣の状態を確認する。

男性の精液を採取して調べる精液検査では、精子の数や運動率、精子の見 た目の奇形率などが詳細に分かるが、精液検査の結果はその日の体調やスト レスなどによって、射精の完成度が左右されやすいため、一度の思わしくな い検査結果で落ち込む必要はない。

日を置いて、前回とは違う時間帯や曜日など、条件を別にして精液を採取 し、2〜3回検査してみてほしい。それでも結果が悪ければ、内分泌検査、 染色体分析、遺伝子解析など、さらに詳しく調べることになるだろう。

男性不妊の原因は、元気な精子を十分に作る力がない(造精機能障害)か、 勃起や射精ができないなど、妻の膣内にタイミングよく精子を送り込む力が ない(性機能障害)かに大別される。

だが、多くを占めるのは造精機能障害で、精子の数が少ない、元気がない、 動かない、全くいない、形が異常な精子が多いなど様々だ。 その原因は、現在の検査方法では分からない場合が多 いため、根治できる治療法や特効薬はなく、ビタミン剤や漢方薬などが補助 的に処方される。それと同時に、体外受精や顕微授精などへ進むことも視野 に入れる必要があるだろう。

また、喫煙者は禁煙することが望ましい。喫煙は造精機能を低下させるだ けでなく、様々な生活習慣病を引き起こす。親になる者の責任として避けら れるリスクは回避したうえで、定期的に性交渉を持つことが重要だ。

不妊患者の大半は、医師から「排卵日のこの日に性交渉を」と指導され、 その日にしかしなくなってしまう場合が多い。しかし、デリケートなことな ので、強制されたら性交渉ができなくなる男性も少なくない。そこで新たな 問題として、マスターベーションではできるのに、妻と.はできない膣内射精 障害も増えている。

「自分に原因があったら…」と心配なら、初めは妻に精液を持たせて検査 をしてもらってもいいだろう。だが、2回目以降は、夫婦一緒に受診してほ しい。不妊は、夫婦で努力して解決していく問題だからだ。恥ずかしがらず、 何でも話し合って2人で治療を進めることが、不妊治療の第一歩だと言える。
 (談話まとめ:内藤綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2008/03/24号、岡田弘=獨協医料大学越谷病院泌尿器科教授]

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